食欲ある高齢者の体重が減少するのはなぜ?元気なのに痩せる理由や注意すべき痩せ方

「食欲があるのに高齢者の体重が減少するのはなぜだろう?」
「高齢者の体重減少で注意すべきポイントが知りたい」
元気なのに高齢者が痩せることに疑問を抱いている人のために、情報をまとめました。
高齢者の体重が減ると体力や筋力が低下したり怪我のリスクが高くなったりして、寝たきりになる可能性が高くなってしまいます。
食欲があるのに痩せる原因や受診の目安、対策のポイントなどを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
高齢者が食欲あるのに痩せる原因

- 筋肉量の減少
- 消化吸収機能の低下
- 何らかの疾患
食欲がある高齢者が痩せる原因として、上記3つが考えられます。
加齢とともに筋繊維の数は減り、筋繊維そのものが萎縮するため、筋肉量は減少します。筋肉は体重の大部分を占めるため、筋肉が減ると体重も減少してしまうのです。
また、加齢に伴って胃の粘膜が萎縮して胃酸の分泌量は減り、小腸や大腸は栄養素をうまく吸収できなくなります。食べ物をうまく消化できず、摂取した栄養素を効率よく体に吸収できないことから、体に必要な栄養素が不足して体重減少を引き起こすのです。
食欲があるのに痩せていく場合、何らかの疾患が隠れている可能性もあります。甲状腺機能亢進症や糖尿病、がんなどの疾患は体重減少を引き起こすおそれがあるため、注意が必要です。
また、抗うつ薬や甲状腺疾患などの治療薬は、副作用として体重減少を起こすおそれがあります。持病の治療として長期間服用していると、気付かないうちに痩せていることがあるかもしれません。
隠れている疾患や薬の副作用を見過ごさないよう、日頃から体重を測定する習慣をつけ、体重の変化を見過ごさないようにしましょう。
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高齢者の体重減少が及ぼす影響

- 体力・筋力低下
- 免疫力低下
- 怪我のリスクが高まる
高齢者の体重減少は単なる「痩せ」では済まされず、日常生活に大きな影響を及ぼします。具体的な影響として考えられる上記3つについてみていきましょう。
体力・筋力低下
高齢者の体重減少の多くは筋肉量の減少を伴っているため、体力が低下して疲れやすくなります。体力や筋力が低下すると買い物や外出を避けるようになり、活動量が減少するため、さらなる体力低下を招くという悪循環に陥ってしまうでしょう。
また、体重減少は嚥下障害を引き起こす原因のひとつです。体重減少とともに口周りの筋肉が弱まって噛む力や飲み込む力が低下すると、むせたり誤嚥性肺炎を起こしたりする原因になり得ます。
嚥下機能が低下すると食事に時間がかかったり食事に恐怖心を抱いたりして、結果的に食事量が減り、さらに体重減少を進行させることになるでしょう。
免疫力の低下
体重減少は体に必要な栄養素が不足している状態です。免疫機能に関わる栄養素が不足するため、免疫システムがうまく働かず、免疫力が低下します。細菌やウイルスへの抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなるでしょう。
高齢者が感染症にかかると長引きやすく、重症化するリスクも高いといわれています。特に、BMIが18.5~20を下回っている場合は低栄養状態であることが多く、免疫力が低下しているおそれがあるため、注意が必要です。
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怪我のリスクが高まる
体重減少の多くは筋肉量の減少を伴っています。たとえば足の筋肉が減ると、歩行や立ち上がりなどの動作がスムーズにできなくなったり、少しの段差でつまづいたりするでしょう。転倒や骨折といった怪我につながる危険性が高まります。
加齢の影響で骨密度が低下して骨が弱くなっている高齢者が多いことも、怪我のリスクが高まる要因のひとつです。
高齢者が一度骨折すると、日常生活での動作が困難になり、活動量が低下します。活動量が低下すると筋肉量や食欲が減り、寝たきりや要介護状態を招いてしまうでしょう。
食欲がある高齢者が急に痩せた場合は注意が必要?

食欲があるにも関わらず高齢者が急に痩せた場合は、何かしらの疾患が隠れている場合があるため、注意が必要です。考えられる疾患や受診の目安について詳しく解説します。
考えられる疾患
- 甲状腺機能亢進症
- 糖尿病
- 悪性腫瘍など
体重減少を引き起こす疾患として、甲状腺機能亢進症、糖尿病、悪性腫瘍などが考えられます。
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンの過剰分泌によって代謝が活発になることで、食欲があるにも関わらず体重が減ってしまう状態です。
糖尿病はインスリンの作用が弱まったり効きが悪かったりして、血糖が細胞にうまく取り込まれず、体重減少につながることがあります。
悪性腫瘍は正常な細胞よりもエネルギー消費が多いことから、体重減少を引き起こしやすい疾患です。
高齢者の急激な体重減少は、食欲の有無に関わらず体が何らかの異常をきたしているサインであることが少なくありません。体重の変化に気付いたら早めに医療機関を受診し、原因を明らかにすることが大切です。
受診の目安
目安として、6か月間で以前の体重から5%以上、または4.5kg以上の体重減少がある場合や体重減少のほかにも症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。何らかの疾患が隠れている可能性があります。
早めに受診すれば、疾患に対する適切なアプローチが可能となり、重症化する前に対応することができるでしょう。医療機関では、体重減少の原因に合わせて、食事や運動のポイントなど専門的なアドバイスをもらえます。
高齢者の体重減少は年齢によるものだと思い込みやすいですが、深刻な変化がみられたら躊躇せず医療機関を受診し、適切な治療やアドバイスを受けましょう。
高齢者の体重減少を防ぐポイント

単なる「痩せ」では済まされない高齢者の体重減少は、食事や運動、生活習慣などの工夫で防げる可能性があります。体重減少を防ぐポイントについて詳しく見ていきましょう。
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食事と間食
エネルギーとタンパク質を意識した食事をとりましょう。食欲はあっても、エネルギー量が不足していると体重は減少してしまいます。タンパク質は筋肉の元になる栄養素であるため、筋肉量の維持に欠かせません。
食事だけで補いきれない栄養素を摂取するために、食事に加えて間食するのもよいでしょう。少量でエネルギーとタンパク質を摂取できるプリンやカステラ、ギリシャヨーグルトなどの食品が間食におすすめです。
運動習慣
日常的な運動は、筋肉量減少を防ぐ効果があるため、体重減少対策に有効です。筋肉量が維持できると、寝たきりや要介護状態になるのを防げる可能性があります。
また、体を動かすと活動量が増えるため、いつもよりも食欲がわいて食事量がアップし、体重維持につながるでしょう。
体を動かすと気分が前向きになったり生活リズムが整えられたりするのも、運動習慣をつけるメリットです。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を選んで取り組みましょう。
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その他
口腔ケアや社会参加、生活リズムの調整なども、高齢者の体重減少対策に効果的です。
口腔ケアを怠ると口の中の衛生状態が悪くなり、虫歯や歯周病などの歯科疾患を引き起こすおそれがあります。結果的に、口から「食べる」機能が低下すると食欲が低下したり食べ物を十分に消化・吸収できなくなったりして、体重減少をまねくリスクが高まるでしょう。
また、人との関わりが減ると、孤独感や食事への楽しみが減り、食欲や食事量が低下する場合があります。地域の集まりやボランティア活動など、社会と関わる機会を持つと、会話や食事の楽しみが生まれ、食欲や食事量の維持につながるでしょう。
生活リズムを整えることは、体重維持に役立ちます。生活リズムが乱れると、朝食と昼食をまとめて済ませたり、1日1~2食になったりしてしまいがちです。食事量が減るため、体重減少を進行させてしまいます。
決まった時間に起きて1日3回食事をして、日中は適度な運動をする、というように生活リズムを規則正しく整えることが大切です。特に朝は、朝日を浴びて朝食を食べることで体内時計が整い、自然と食欲や食事量が安定して活動的な1日を送れるようになるため、朝食は抜かないようにしましょう。
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食欲があっても高齢者の体重減少は見過ごさずに対応しよう
高齢者で食欲はあるのに体重が減っていく場合、一見問題がないように思えても疾患が隠れているケースがあります。体重減少は、体力・筋力の低下や免疫力の低下、転倒や骨折など怪我のリスクが高まるなど、日常生活にさまざまな影響をもたらすため、放置するのは危険です。
対策として、エネルギーとタンパク質を意識した食事、運動、社会参加、生活リズムの調整などが挙げられます。日々の生活を少し見直すことが、体重維持につながるカギになるでしょう。
ただし、6か月間で以前の体重から5%以上、または4.5kg以上の体重減少がみられる場合は早急に医療機関を受診してください。医療機関では原因を明確にして適切な治療やアドバイスを受けられるため、早めの対応で体重減少を予防しましょう。
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PROFILE

管理栄養士
今井尚美
(Imai Naomi)
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