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2025.1.9

高齢者は口腔ケアしないとどうなる?目的や必要性、注意点など解説

高齢者は口腔ケアしないとどうなる?目的や必要性、注意点など解説

「口腔ケアって何?」
「高齢者が口腔ケアしないとどうなるんだろう?」

高齢者が長く健康で居続けるためには、口腔ケアが重要です。しっかりケアをしていなければ心身の健康を維持できない可能性があるでしょう。

今回は、高齢者に多くのメリットをもたらす口腔ケアについて詳しくご紹介します。高齢者本人がケアできない場合は家族や介護者が協力してケアを行い、高齢者の健康や生活の質の維持・向上に努めましょう。

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高齢者の口腔ケアとは?

高齢者の口腔ケアとは?

高齢者の口腔ケアは、口の中を清潔に保つケアに加えて、噛む・飲み込む・話すなど口に関係するさまざまな機能を回復・維持・向上させるトレーニングも含めたケアです。具体的には器質的口腔ケアと機能的口腔ケアの2種類に分類されており、それぞれやり方や目的などが異なります。

2種類の口腔ケアについて詳しく見ていきましょう。

器質的口腔ケア

器質的口腔ケアとは、うがいや舌の清掃、歯磨きなど、口の中を清潔に保つためのケアです。義歯の洗浄や歯ぐきの清掃も含まれます。

口の中が清潔に保たれると細菌の増殖を防げるため、虫歯や歯周病といった歯のトラブル予防が可能です。口臭を防ぐ効果も期待できます。

食後や寝る前など毎日の生活でセルフケアに取り組みましょう。また、セルフケアでは完全に落とせない汚れを落としてもらえたり専門的なアドバイスが受けられたりするため、定期的に歯科医・歯科衛生士による指導を受けることも大切です。

機能的口腔ケア

機能的口腔ケアは、口の周りのマッサージやリハビリ、トレーニングなどで噛む・飲み込む・発音するなど口がもつ機能の回復・維持・向上を図ります。具体的には、舌の体操や唾液分泌を促すマッサージ、発音トレーニングなどです。

機能的口腔ケアを行うと口周りの動きが良くなるため会話しやすくなり、人とコミュニケーションを取りやすくなります。会話におけるストレスを軽減し、孤独感の解消に役立つでしょう。

マッサージやリハビリによって口周りの動きがよくなると、歯でしっかり食べ物を噛めるようになります。歯で噛むことは脳の活性化を促すといわれており、認知症の予防にも効果的です。

高齢者は口腔ケアしないとどうなる?

高齢者は口腔ケアしないとどうなる?
  • 歯科疾患を引き起こす
  • 口臭が強くなる
  • 栄養状態が悪くなる
  • 感染症にかかりやすくなる
  • オーラルフレイルを引き起こす
  • 認知症予防になる

高齢者が口腔ケアをしないと、口の中で細菌が増殖して虫歯や歯周病などの歯科疾患を引き起こすリスクが高くなります。口臭が強くなるなど、口内の清潔にも悪影響です。

また、口から「食べる」機能が加齢とともに衰えると食欲が減退したり、食べ物を消化・吸収しやすい状態にできなかったりすることから、栄養状態が悪くなるおそれもあります。

高齢者に多い誤嚥性肺炎やその他感染症に罹患するリスクも高くなるでしょう。誤嚥性肺炎とは、誤って食べ物や唾液が気道から肺に入り込み、含まれる細菌によって引き起こされる感染性肺炎です。口内の衛生が保たれていなければ菌が増殖しやすいため、風邪などの感染症にもかかりやすくなります。

口腔ケアによって原因となる細菌そのものを減らすと、誤嚥性肺炎をはじめとする感染症の発症リスクを減らせるでしょう。

口腔ケアを怠って口周りの動きが低下すると、オーラルフレイルの原因にもなります。オーラルフレイルとは、老化に伴って生じる口周りの機能低下のことです。「食べる」機能が衰えるだけではなく、心身の健康にも影響を与えるため、口腔ケアで口周りの動きを回復・維持させる必要があります。

さらに、口腔ケアは脳への血流が促されることが報告されており、認知症予防も期待できるでしょう

高齢者が口腔ケアを怠ると、口の中が不衛生になったり食べる機能が低下したりするのに加えて、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるため、毎日のケアが大切です。

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高齢者の口腔ケア手順

高齢者の口腔ケア手順
  1. うがい
  2. 歯ブラシで歯みがき
  3. 口腔内清拭
  4. 舌の掃除
  5. うがい

口腔ケアは上記の手順で行います。正確な手順を把握していれば適切でスムーズな口腔ケアを行うことができ、高齢者の負担を減らせます。具体的な手順について一つずつ見ていきましょう。

1.うがい

最初にうがいをして、口の中にある食べカスや汚れを取り除きます。可能な場合は、左右の頬を片方ずつブクブクして動かした後、全体をブクブクとして汚れを吐き出しましょう。汚れを取り除くだけではなく、口の中を潤す効果も期待できます。

ただし、要介護状態など自力でうがいができない高齢者が無理矢理うがいをすると、誤嚥するリスクがあるため注意が必要です。口の中が乾燥している場合はガーゼやスポンジブラシなどで事前に唇や口の中を湿らせておきましょう。

2.歯ブラシで歯みがき

歯みがきができる人は、自力で歯をみがいてもらいます。歯ブラシは、小刻みに優しく動かすのがポイントです。歯ブラシの毛先が歯に対して直角になるように持ち、軽い力で歯を1本ずつ優しく丁寧にみがきます。

高齢者の状況に合わせて、電動歯ブラシを使用したり介護者が手首を支えたりしましょう。介護者は、みがき残しがある場合に仕上げみがきをする程度でOKです。

介助が必要な高齢者の場合は、介護者が歯みがきを行います。歯みがきをする反対側の手で高齢者の顎や唇を固定しながら、みがき残しがないように歯をみがきましょう。

入れ歯や義歯は外して、専用の歯みがき粉を使用してみがきます。一般的な歯みがき粉を使うと研磨剤で入れ歯や義歯が傷つくおそれがあるため、控えましょう。

3.口腔内清拭

口腔内清拭とは、口腔内専用のウェットティッシュやスポンジブラシなどを用いて口の中の汚れを拭き取ることです。頬の内側や唇の内側、上顎など粘膜の掃除をします。

粘膜はデリケートなため、優しくマッサージをする要領で口の奥側から手前に拭き取ります。奥まで指を入れると嘔吐するような不快感を与えるおそれがあるため、力加減と清拭する部位に気を付けて行いましょう。

4.舌の掃除

舌ブラシで舌を奥から手前、内側から外側にこすり、舌の表面についた汚れを取り除きます。白くこびりついた汚れは舌苔(ぜったい)といい、食べカスや細菌が集まってできたものです。口臭の原因になるため、適切なケアで取り除く必要があります。

舌は柔らかくデリケートであり、一般的な歯ブラシでみがくのは危険です。専用のブラシやスポンジブラシ、ゴムやシリコン製のヘラなどを使って掃除してください。介護者の指にガーゼを巻き付けて、やさしく舌の汚れを拭き取る方法もあります。

5.うがい

うがいをして、口の中に残った汚れを吐き出します。うがいができない場合は、ウェットティッシュなどで汚れを拭き取ります。

必要に応じて、最後に保湿剤を用いて口の中を潤しましょう。

高齢者の口腔ケア注意点

高齢者の口腔ケア注意点
  • できることは自分で
  • 誤嚥・口腔内の乾燥に注意
  • 口腔内に変化があれば歯科医に相談する

高齢者の口腔ケアは、上記のような注意点をふまえて行う必要があります。それぞれ詳しく解説していきます。

できることは自分で

身体機能の維持・向上につながるため、できることは自分で行いましょう。高齢者本人が扱いやすいアイテムを用意し、自分で口腔ケアができる環境を整えることが大切です。たとえば、手首の力が弱い場合は電動歯ブラシを活用しましょう。

介護者は、高齢者本人がみがけない部分のサポートや仕上げみがき、最終チェックを行ってください。

誤嚥・口腔内の乾燥に注意

飲み込む力が低下している高齢者に口腔ケアを行う場合は、口の中の水分や細菌が原因で誤嚥を引き起こすおそれがあります。水分や唾液は適宜ガーゼで拭き取りながらケアを進めると安全を確保できます。

体を起こせない場合は、枕などであごを引いた状態で行ったりリクライニング式車椅子を活用したりして、嚥下反射が起こらないような工夫が必要です。

また、口の中が乾燥した状態でケアを行うと、出血するおそれがあります。乾燥した口の中の粘膜は傷つきやすく感染しやすい状態であるため、事前に口腔ジェルを塗ったり舌体操や嚥下体操で唾液の分泌を促したりしてからケアを行いましょう。

口腔内に変化があれば歯科医に相談する

ケアを進めていく中で、口の中に変化が生じた場合は歯科医に相談しましょう。出血や赤み、痛みや腫れがある部位は無理にケアすると症状を悪化させたり感染を起こしたりなどトラブルを生じかねません。高齢者本人が不快感を抱く場合もあるでしょう。

口内のトラブルを最優先で対処する必要があるため、自己判断せずに歯科医の指示に従うことが大切です。また、口腔ケアを行う前には口の中を観察して、トラブルの有無を確認しておくとスムーズにケアを進められるでしょう。

生活リハビリデイサービスりふりの口腔ケア

生活リハビリデイサービスりふりの口腔ケア

「生活リハビリデイサービスりふり」では、昼食後に口腔ケアを実施しています。利用者は順番に洗面所に移動し、歯みがきをはじめとする口腔ケアを行うのが習慣です。

りふりの洗面所は広く、車椅子の方も車椅子のまま洗面所で歯みがきやうがいができます。杖を立てかけることも可能で、口腔ケアのアイテムを自立した利用者が使いやすいように配置するなど、さまざまな工夫を施しているのが特徴です。

アットホームな雰囲気を大事にし、口腔ケアに対して細やかな配慮を行うりふりでは、すべての利用者が抵抗なく口腔ケアに取り組んでいます。

口腔ケアで高齢者の生活の質維持・向上を図ろう

高齢者の口腔ケアは、歯のトラブル予防や口腔機能の回復・維持・向上など多くのメリットがあります。口腔内を清潔に保つことで会話しやすくなったり誤嚥性肺炎を予防できたりするため、精神面や全身の健康にもよい影響をもたらすでしょう。

ケアの際は、身体機能の維持・向上のためできる限り自力で行うように心がけ、誤嚥や口の乾燥に気を付けながら進めてください。進めていくなかで変化が生じた場合は、自己判断でケアを続けず、歯科医に相談して指示に従うことが大切です。

安全に適切な口腔ケアを行うことで、高齢者の生活の質を底上げできるでしょう。




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