高齢者のヒートショックとは?メカニズムや予防策・緊急時の対処法など

「高齢者のヒートショックはどういう症状だ出る?」
「高齢者がヒートショックを起こさないための対策は?」
など知りたい方のために、高齢者のヒートショックについてまとめました。
ヒートショックが起きる原因やヒートショックの予防法、もし起きたときの対処法などを解説します。
ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急な温度変化によって血圧が大きく変動し心臓や血管に負担がかかる現象のことです。
医学的な正式名称ではありませんが、入浴時や冬場の脱衣所・浴室などで起こる血圧変動による健康被害を指す言葉として広く使われています。
ヒートショックが起こるメカニズムと症状について見ていきましょう。
ヒートショックが起こるメカニズム
ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧の激しい乱高下が心臓や脳に負担をかけることで発生します。
たとえば、冬場の寒い脱衣所では体が体温を維持するために血管を収縮し、血圧が急激に上昇するでしょう。その状態で急に熱いお湯に浸かると体温を下げようとする機能が働き、血管が一気に拡張して血圧が急激に下降します。
血圧の変動に体が対応しきれないと脳や心臓への血流が一時的に乱れ、めまいや失神、重篤な場合は心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすというメカニズムです。
ヒートショックの症状
ヒートショックの軽い症状はめまいや立ちくらみですが、症状が進行すると頭痛や胸痛・吐き気・冷や汗などが現れ、さらに重症化すると意識障害や失神を引き起こします。
危険なのは心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患を発症するケースです。循環器系の持病がある場合は、重篤化のリスクが高いといえるでしょう。
高齢者はなぜヒートショックが起こりやすい?

- 保温と血圧の調節機能が低下している
- 血管の柔軟性が悪い
- 寒さに対する感覚の鈍化
高齢者は上記のような身体機能の低下により、ヒートショックを起こしやすいといわれています。
保温と血圧の調節機能が低下している
高齢者がヒートショックを起こしやすいのは、体温の調節機能と血圧調節機能が加齢とともに低下する傾向にあるためです。
加齢により筋肉量や皮下脂肪が減ると体内の熱を保ちにくくなり、寒い場所では体温が下がりやすくなります。
体は熱を逃がさないようにしようと血管を急激かつ強く収縮するため、血圧の急上昇が起こってヒートショックが生じやすい状況になるでしょう。
また、自律神経の働きが衰えると血圧を調整する反応が遅れ、過剰で急激な変動が生まれてしまいます。
その結果、急な温度変化に体が対応できず、血圧が急激に上昇・下降してヒートショックを引き起こしてしまうでしょう。
血管の柔軟性が悪い
加齢によって血管の壁が硬くなり、弾力性が失われていくこともヒートショックの原因です。
柔軟性が悪い血管は収縮や拡張の際に抵抗が大きくなり、血圧の急上昇や急降下を引き起こしてしまうといわれています。
血管が破れたり詰まったりすれば脳出血や心筋梗塞など、重篤な症状を招きやすくなるでしょう。
寒さに対する感覚の鈍化
加齢により皮膚や体の感覚機能が低下すると寒さや温度変化を感じにくくなり、エアコンを調節せずに室内の寒暖差が大きいまま過ごしてしまうことがあります。
一方で年齢とともに筋肉量や代謝が減少し、体の熱を生み出しにくくなるために多くの高齢者が寒がりになるでしょう。
しかし「寒い」と感じていても、全身の感覚が鈍いために危険な温度差を正確に把握できないことも少なくありません。
つまり、高齢者は寒いと感じやすくはありますが、感覚機能の低下によって「危険な寒さである」という緊急性を認知しにくい状態です。そのため、対応が遅れたりできなかったりし、体が許容できる限度を超えて冷えすぎてしまうことがあるといわれています。
高齢者のヒートショックはお風呂とトイレに注意

お風呂とトイレは高齢者のヒートショック事故が起こりやすい場所といわれています。
入浴時は暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動し、その後熱い湯船に浸かるという複数回の急激な温度変化が連続して起こります。
湯船から上がる際にも血圧が急降下するため、立ちくらみを起こして転倒したり浴槽内で失神して溺れたりするリスクも考えられるでしょう。
トイレはお風呂場と並ぶリスクがあるにもかかわらず、見落とされやすい危険スポットです。
暖かい部屋から寒いトイレへ移動すると血圧が急上昇し、さらに排便時のいきみによって血圧がさらに上昇します。
排便後に急に力を抜いたときに血圧が急降下し、失神や脳血管障害を起こすケースが少なくありません。
特に早朝の冷え込んだトイレはリスクが高く、夜間頻尿のある高齢者は一晩に何度も温度差にさらされることになります。
高齢者のヒートショック防止策

- 室温を均一にする
- 湯温と入浴時間を制限する
- 入浴前後の水分補給
上記のような居住空間の温度管理や、入浴前後の心がけでヒートショックを予防しましょう。
室温を均一にする
できるだけ室内の温度差がない状態を保ち急激な血圧変動を防いで、心臓や血管への負担を軽減しましょう。
ヒートショックは暖かい部屋から寒い浴室や脱衣所、トイレへ移動した際の急な温度変化で起こりやすいため、家全体の温度差を減らします。
脱衣所や廊下などにも暖房器具を置き、空気の冷えを防ぎましょう。
浴室に暖房を置けない場合はシャワーでお湯をためて温かい蒸気で浴室を蒸したり、入浴前に浴槽の蓋を開けておいたりすると、浴室の温度をある程度上昇させることが可能です。
湯温と入浴時間を制限する
高齢者のヒートショック防止策として湯船の温度は41℃以下、入浴時間は10分程度までが推奨されています。
熱い湯は血圧の急激な変動を引き起こしやすく、心臓への負担も大きいためです。
入浴の手順も工夫するとなおよいでしょう。
いきなり湯船に入らず、まず足先や手先などの末端から徐々に体にかけ湯をして体を温度変化に慣らします。湯船に入るときも、急に肩までつからずゆっくり体を沈めましょう。
入浴前後の水分補給
水分不足だと血液の量が減少し、血圧を一定に保つことが難しくなるといわれています。ヒートショックを起こしやすい体内環境を作り出してしまうため、水分はこまめに摂取しなければなりません。
特に入浴中と入浴後は発汗により水分が失われやすく、水分補給を意識する必要があります。
入浴前後にコップ1杯(200ml程度)の水分を摂り、体が水分不足にならないようにしましょう。
冷たい飲み物は体を冷やし血管を収縮させるため、常温かぬるめの飲み物が適しています。
高齢者の水分補給について詳しくはこちら↓
高齢者の水分補給は何がいい?1日の摂取量目安やタイミング・拒否された際の対応など
高齢者のヒートショックが起こった際の対処法

万が一ヒートショックが起きた際は本人の意識状態を確認し、状況に応じた処置を行いましょう。
意識がはっきりしている場合
本人の意識がはっきりしていて会話ができる状態であれば、まずは安全な場所で安静にしましょう。
移動する際は急激な血圧変動を防ぐため、ゆっくり移動する必要があります。
体が濡れている場合はタオルで水分を拭き取り、バスローブやバスタオルで体を包むと急激な体温低下を予防できるでしょう。
可能であれば一口ずつゆっくり水分補給をすると、脱水や血液粘度の低下を防げてその後に重篤な状態となるのを防止できることがあります。
症状が軽く見えても悪化する可能性があるため、しばらく様子を観察して症状が続く場合や悪化する兆候があれば救急車を呼びましょう。
意識レベルが低下している場合
呼びかけに反応が鈍いまたは全く反応がない場合は、一刻を争う緊急事態であるため救急車を呼びましょう。
浴槽内で倒れている場合は水面に顔が出るよう姿勢を変え、浴槽の栓を抜いて溺水を防ぎましょう。
体を横向きにすると、気道を確保し嘔吐による窒息を防ぐことが可能です。
浴槽のお湯が抜けたらタオルや毛布で体を包み、体温低下を防ぎながら救急車を待ちます。
高齢者のヒートショック予防は浴室とトイレの温度差対策から
ヒートショックは、急な温度変化によって血圧が大きく上下し、心臓や血管に負担がかかって生じる症状です。
寒い場所から温かい場所、またはその逆に移動した際に血管が収縮・拡張し、血圧が短時間で激しく変動します。急激な血圧変動が原因で心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こすリスクがあります。
高齢者は体温調節機能や寒暖差を感じる機能が低下しているため、急激な寒暖差に対応できずヒートショックを起こしやすいことが特徴です。
さらに血管が弱くなっているため、急な血圧変動による血管へのダメージが大きく脳卒中や心筋梗塞になりやすいといえるでしょう。
ヒートショックを防ぐには室温の温度差をなくしたり、入浴を工夫し十分な水分を摂ったりなどの対策が必要です。
もし、高齢者がヒートショックを起こした場合は症状が治まるまで安静にし、意識がない場合はすぐに救急車を呼びましょう。
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