食べているのに高齢者が低栄養になる原因や対策、アルブミンを上げる食事など紹介
「食べているのに低栄養になるのはなぜだろう?」
「どんなものを食べたら、低栄養を防げるのかな?」
高齢者は、食事をとっていても低栄養になりやすいといわれています。低栄養になると免疫力や筋力が低下して、元気な日常を送れなくなるでしょう。
今回は、高齢者の低栄養について、原因や対策、食事のポイントなどを解説します。簡単に作れる食事レシピも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
低栄養について
低栄養とは、口腔機能の低下などが理由で食事量が減り、体が必要とするエネルギー量やタンパク質量が不足している状態をいいます。食事をとっているから低栄養にはならないというわけではなく、食べる量や食べる内容によっては低栄養になることがあるため、食事がとれている高齢者でも注意が必要です。
厚生労働省の報告によると、65歳以上の低栄養傾向(BMI≦20kg/㎡)の高齢者の割合は年々増加しており、年齢が上がるほど割合が増えることが分かっています。
低栄養になると、筋力が低下して疲れやすくなるなど、日常に及ぼす影響が大きいことから、食事を見直すなどの対策が重要です。
参照:厚生労働省 地域高齢者等を取り巻く食環境の状況等について
低栄養の症状
- 半年で2~3kg体重が減る
- 体調を崩しやすく治りにくい
- 食欲が出ず魚や肉をまったく食べない日がある
- 転倒しやすくなったり歩くスピードが遅くなったりしている
低栄養になると、疲れやすくなって活動量が減り、エネルギー消費量の減少から食欲が低下して、さらに低栄養が進行してしまいます。
また、肌が乾燥しやすくなったりやつれて顔つきが変わったりと、外見から低栄養の症状が見られるケースもあるため、日頃から高齢者の様子を注意深く見ておくと、早期に低栄養を発見して対策ができるでしょう。
低栄養の原因
低栄養は、「身体的側面」「社会的側面」「精神・心理的側面」など、1つまたは複数の要因の影響を受けて、食事に偏りが出たり食事量が低下したりすることで引き起こされます。
身体的側面
加齢によって体力が低下し、長時間歩くことや重たいものを運ぶことが困難になります。
その結果、食材の買い出しや長時間キッチンに立つことが苦痛に感じ、加工食品を使って食事を済ませる・品数を減らすなどの食習慣になり、食事が偏ったり栄養不足になったりするケースが多くみられます。
味覚や嗅覚の低下、口腔機能の低下といった身体的側面も、低栄養になる要因だといえるでしょう。
社会的側面
独居の増加や年金減少といった社会的側面も、高齢者の低栄養を引き起こす原因です。
昨今は一人暮らしの高齢者が増え、孤食で食事が進まないことから低栄養となるケースも少なくありません。
また、年金のみで生活しているなど経済的に困窮し、満足な食事ができていない高齢者も増えています。
精神・心理的側面
配偶者との死別、身体的な衰えによるストレスといった精神・心理的側面から食欲が減退し、低栄養を引き起こすことも多いといわれています。
高齢者が食べているのに低栄養になる原因
高齢になると、消化吸収力が低下するため、食事をとっていても実は十分な栄養が吸収できていない可能性があります。
また、高齢者は、若い頃よりも食欲が低下したり、コレステロールや脂質の過剰摂取を気にしたりして、肉や魚などのタンパク質を避ける傾向がみられます。タンパク質の摂取不足から、低栄養を引き起こすことも多いです。
さらに、加齢によって若い頃よりも活動量が減ると、食事量そのものが低下している場合があります。食事量が低下すると栄養不足になり、疲れやすくなることから活動量が減り、さらに栄養不足が悪化するという悪循環が生じるケースも多くみられます。
高齢者の低栄養が招く影響
- 免疫力低下
- 皮膚のバリア機能低下
- 筋力低下
- 低たんぱく血症などの疾患にかかりやすくなる
高齢者が低栄養になると、免疫力の低下によって感染症にかかりやすくなったり、皮膚バリア機能の低下によって褥瘡ができやすくなったりします。
高齢者は感染症や傷の治りが悪いため、症状が長引くと痛みなどで活動量が減ってしまい、筋力が低下してサルコペニア状態になるおそれがあります。
また、低栄養は低たんぱく血症を引き起こす場合があります。低たんぱく血症とは、血液中のタンパク質が通常よりも少ない状態で、肝臓や腎臓の機能が低下してむくみを引き起こすため、早期に対策を講じなければなりません。
高齢者の低栄養を防ぐにはアルブミンが鍵
高齢者の低栄養を防ぐには、血液中のアルブミン濃度を維持することが鍵となります。アルブミンとは何なのか、アルブミン濃度を上げる食事のポイントなどについて見ていきましょう。
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アルブミンとは?
アルブミンは、血液中に存在する主要なタンパク質の1つで、主に肝臓で合成されています。
アルブミンの正常値は4.0g/dlで、3.5g/dl 以下になると低栄養と判断され、適切な栄養管理など医療の介入が必要です。
アルブミンは、血液を正常に循環させるために必要で、体内の栄養素を運搬する働きがあるといわれています。低栄養となってアルブミン濃度が低下すると、必要な栄養素が体内に行き渡らず、免疫力や認知機能の低下などを引き起こすでしょう。
アルブミンは高齢者が健康に生活するために非常に重要です。
アルブミンを上げる食事のポイント
- 良質なタンパク質をとる
- 3食食べる
- 適切な食事量をバランスよく食べる
アルブミン値を低下させないために、食事面では上記の3つがポイントとなります。
良質なタンパク質をとる
1つ目は、魚や肉、卵、乳製品、大豆製品など良質なタンパク質を摂ることです。
タンパク質は筋肉や内臓など体を作る材料になる栄養素であるため、不足すると体力や免疫力、筋力が低下して低栄養を引き起こす原因になり得ます。
タンパク質を含むおかずを、毎食最低1品は食事に取り入れるようにしましょう。
3食食べる
2つ目は、3食食事をすることです。高齢になると1回に食べる量が減るため、1日3回食事をしなければ、1日に必要なエネルギー量・タンパク質量が不足するおそれがあります。
また、1日3回食事をすると、生活リズムが整えられることから活動量が増え、食欲が出て低栄養を予防できるというメリットもあります。
適切な食事量をバランスよく食べる
3つ目は、適切な食事量をバランスよく食べるということです。
カップラーメンなどの加工食品だけで食事を済ませたり、好きな食べ物だけを食べたりするのではなく、多種多様な食品を取り入れ、主食・主菜・副菜がそろった食事を意識しましょう。
さまざまな栄養素をバランスよく摂取すると、栄養素の偏りを防いで低栄養を予防できるでしょう。
高齢者の低栄養防止対策!アルブミンが上がる食事レシピ
高齢者の低栄養防止に役立つ、アルブミンを上げる食事レシピを2つご紹介します。手軽に購入できる食品で簡単に作れるため、ぜひ試してみてください。
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枝豆入り高タンパク三色丼
(材料・1人分)
- ご飯 200g
- ツナ缶 1缶(70g)
- ★醤油 大さじ1
- ★みりん 小さじ1
- ★砂糖 小さじ1
- 卵 1個
- ●砂糖 小さじ1
- ●醤油 小さじ1/2
- 冷凍枝豆 50g(さやなしで約20g)
(作り方)
- フライパンに油をひいて、ツナ缶を汁ごと入れて炒める。★印の調味料を加え、汁気が減ってくるまでさらに炒める。
- 炒めたツナを汁ごと皿にとっておく。ボウルに卵と●印の調味料を加えて混ぜ合わせ、フライパンで炒めてたまごそぼろを作る。
- 冷凍枝豆は流水で解凍し、実をさやから出しておく。
- 丼ぶりにご飯をよそい、ツナ・ツナの汁・卵・枝豆を盛り付けたら完成。
タンパク質たっぷり冷や汁そうめん
(材料・2人分)
- そうめん(乾) 200g
- 木綿豆腐 1/2丁
- きゅうり 1本
- かまぼこ 10g
- ★水 1カップ
- ★みそ 大さじ2
- ★めんつゆ 大さじ3
- ★和風顆粒だし 小さじ1
- ★白すりごま 大さじ1
(作り方)
- きゅうりは薄く輪切りにして、塩もみしておく。豆腐は2~3cm角にちぎり、かまぼこは薄く切っておく。
- ボウルに★印の調味料を入れて混ぜ合わせる。1のきゅうり・豆腐を加えてさらに混ぜ合わせる。
- 鍋でそうめんを茹でて流水で冷やし、水気をよく切ったあと皿に盛り付ける。
- 3に2をかけ、かまぼこをトッピングしたら完成。
低栄養の悪循環を防ぐために、食事を工夫しよう
低栄養とは、食事量の低下・口腔機能の低下などが理由で食事量が減り、体が必要とするエネルギー量・タンパク質量が不足している状態をいいます。低栄養になると血液量のアルブミン濃度が低下し、免疫力が下がって感染症にかかりやすくなったり、筋力が落ちたりします。
筋力が低下すると活動量が低下して食欲が減り、さらに低栄養状態を悪化させるおそれがあるため、良質なタンパク質を摂取する・3食食事をするなど食事面での工夫を心がけることが大切です。
低栄養の悪循環に陥らないために、毎日の食事を少し工夫して、健やかな体を維持しましょう。
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