介護難民とは?現状や原因・解決策などを解説

「介護難民って何?」
「介護難民の対策はある?」
など知りたい方に向けて、介護難民とはなにかを詳しく解説します。
具体的な対策や準備についても触れているため、現在介護中の方や将来介護の可能性がある方は、ぜひご覧ください。
介護難民について

高齢化が進むなかで介護が必要な人の数が増加しており、介護サービスの供給が追いつかない状況が続いています。
そのため、介護を受けたくても受けられない人々が増えているのが現状です。
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介護難民とは
介護難民とは、介護が必要な状態にもかかわらず、さまざまな理由で必要な介護サービスを受けられない人のことです。
経済的な問題、核家族化などで介護者がいない、施設がいっぱいで入れないなどが原因で介護難民になってしまうと考えられています。
必要な介護サービスが受けられない状況は要介護者本人のQOLを低下させるだけではなく、家族の負担増加にもつながるでしょう。
介護難民の現状
超高齢化社会により、介護を必要とする人々の数は年々増加の一途をたどっています。
2024年10月時点での要介護認定者数は721.6万人に達し、対して介護職員数は212.6万人です。
介護施設の人員配置基準は施設によって異なりますが、おおよそ利用者3人に対して介護職員1人が基準とされています。
単純計算すると、約24万人の介護職員が不足していると考えられるでしょう。
待機者の増加や介護サービスの質の低下、介護職員の労働環境の悪化などさまざまな問題にもつながっているため、早急な対策が求められています。
参考:厚生労働省「介護職員数の推移」
参考:厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(令和6年10月暫定版)」
介護難民が増える原因

- 少子高齢化
- 介護施設や人材の不足
- 過疎地域の介護砂漠
- 高齢者の経済的困窮
- 核家族化
- 情報弱者の増加
介護難民問題は、上記の課題が単独で存在するのではなく、相互に影響し合い複雑な社会問題を形成しています。
少子高齢化
日本は現在、深刻な少子高齢化社会に直面している国です。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年は、75歳以上の人口が全人口の約18%、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると予想されています。
一方で労働の中核的な担い手となる15~64歳の人口は減少を続けており、介護業界の人材不足も深刻です。
少子高齢化は、介護サービスの需要増加と供給低下という両極の課題を生み出しています。
介護施設や人材の不足
入居希望者の数に対して、介護施設の数や人材が足りていません。
保険点数の仕組みにより大幅な賃金アップが難しいことや、夜勤を含む労働環境が原因で、介護業界は慢性的な人材不足が継続中です。
また、介護施設の新規開設コストや運営コストが高騰しているため、特に都心部では入居希望者に対して施設の数が追いつかず、介護難民が増加する一因となっています。
過疎地域の介護砂漠
介護砂漠とは、高齢者人口が多いにもかかわらず介護サービス提供施設が不足している地域のことです。
地方では人口減少により事業の採算が取れず、介護施設の撤退や縮小が進む一方で、高齢化率は都市部以上に高くなっており、需要と供給のバランスが崩れています。
人材不足も都市部に比べて深刻で、必要な人員数を満たせない介護事業所が出てきているのも大きな問題です。
高齢者の経済的困窮
年金支給額の実質的な目減りや生活コストの増加により、昔と比べて生活が苦しいと感じている高齢者が増えています。
預貯金が少ない高齢者も増加傾向で、将来の介護費用への備えが不十分な状況です。
これから起こり得る各種税率アップも、低所得高齢者の生活をさらに圧迫する要因となるでしょう。
核家族化
核家族化が進み、三世代同居や親戚との近居が減っていることも介護難民が増加する原因です。
以前は大家族が多く、近親者で介護を分担できました。
しかし、現在では多くの高齢者が独居または夫婦だけで生活しており、近親者を頼れないという世帯も少なくありません。
核家族化は介護難民だけではなく、老々介護や遠距離介護、孤独死などの原因でもあります。
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必要な情報が認知されていない
高齢者のなかには、受けられる介護サービスについて詳しく知らない人が少なくありません。
また、デジタル化の進行でネットからの情報収集が欠かせない社会となっており、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者は、オンライン上の情報や手続きが困難です。
そのため、利用できる介護サービスや制度、相談窓口などを知らないケースもあります。
特に行政や自治体のサービスは、充分に広報されておらず認知度が低い傾向があるでしょう。
介護サービスは情報を得て手続きしなければ利用できないため、必要な情報を入手できなければ必要な支援が受けられません。
そういった背景も、介護難民が増加する原因です。
介護難民にならないための対策

- 介護に関する情報収集
- 早めの要介護認定申請
- 複数の施設に相談
- 介護サービス・介護保険外サービスの利用
介護が必要な状況になってからでは対応が遅くなる可能性があるため、早めの準備と行動が大切です。
介護に関する情報収集
まずは介護保険の制度や介護サービスの種類、介護関連の相談窓口などをリサーチします。
地域包括支援センターに相談したり、インターネットで検索したりして利用可能な介護サービスや支援制度について情報を収集しましょう。
地域包括センターでは、介護保険制度の説明から地域の介護サービス事業者の情報、利用できる福祉サービスまで、幅広い情報提供や相談対応を行っています。
家族や知人の介護経験者からの情報収集も、実践的なアドバイスを得る上で有効です。
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早めの要介護認定申請
介護保険は要介護認定を申請し、介護が必要であると認定されなければ利用できません。
申請から結果が出るまで約1か月を要するため、早めの申請を心がけましょう。
「自力での生活が少し気がかり」になってきた「入院中だけど退院後の生活が心配」など、加齢や怪我、疾患によって生活に不安が生じた時点で申請し、環境を整えることが重要です。
また、身体の状況が深刻になる前に介護保険サービスを利用すると、状態の悪化を防ぐことも期待できます。
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【要介護認定のメリット・デメリット】要介護認定で受けられる公的サービスや特徴を解説
複数の施設に相談
選択肢を広げるためにも、入居施設だけではなく、地域のデイサービスや訪問介護事業所など、さまざまな機関に相談してみるのがおすすめです。
介護施設には入居型のほかにも、通所型のデイサービスや訪問型の在宅支援サービスなどさまざまあります。
複数の施設に相談すると、要介護者の介護度や家族の希望などに応じて最適なサービスが選択できるでしょう。
介護状態や経済状態によっては、短時間のサービスが適していることあり、状況に応じてサービスを使い分けると経済的な負担も抑えられます。
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デイサービス選びに迷っている方必見!種類・特徴・サービス内容・選択のポイントを解説
介護サービス・介護保険外サービスの利用
介護保険サービスだけではなく、介護保険外のサービスも組み合わせると、より充実したサポートを受けられます。
配食サービスや家事代行サービス、民間の介護タクシーなど、さまざまな生活支援サービスを活用すると介護の負担を軽減できるでしょう。
地域のボランティア組織や民間企業が提供する見守りサービスなども、介護保険サービスを補う手段です。
状況に応じて柔軟にサービスを組み合わせましょう。
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介護難民にならないために要介護前からできること

- 介護資金の貯蓄
- 介護方針を決めておく
- 要介護状態にならないために健康を維持する
上記の準備を計画的に進めると、突然の介護需要にも適切に対応できるでしょう。
介護資金の貯蓄
介護には予想以上の費用がかかり、収入だけでは賄えない可能性があるため介護資金を貯金しておくことが必要です。
介護保険サービスの利用者負担、施設入所時の家賃・食費、介護保険外サービスの利用料などの費用を考慮した貯蓄計画を立てましょう。
また、介護保険の給付制限を受けないよう、介護保険料の支払い状況を確認してしっかり納付することも大切です。
介護方針を決めておく
家族間で介護について話し合い、基本的な方針をあらかじめ決めておきます。
在宅介護か施設入所か、介護を担う家族の役割分担、利用したい介護サービスの種類など、具体的に家族で意見をすり合わせておきましょう。
また、本人が希望する介護の形態や終末期の過ごし方についても元気なうちに確認しておくと、いざというときスムーズに判断できます。
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要介護状態にならないために健康を維持する
要介護状態にならなければ、介護難民にもなりません。
健康管理を徹底し、介護状態になるリスクを予防しましょう。
定期的な運動や適切な食事管理、社会活動への参加など健康維持につながる活動を行います。
地域の健康診断や健康相談などを活用し、専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。
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未来の不安をなくすには今から介護への備えを
介護難民は、少子高齢化などにより介護スタッフや施設よりも要介護者の数が上回った結果、必要な介護サービスを受けられない人のことです。
介護サービスや介護保険について十分な知識を得て、あらかじめ資金準備や介護方針を決めておくと、介護難民になるリスクを軽減できます。
介護の問題は誰もが直面する可能性がありますが、適切な準備があれば、落ち着いてそのときを迎えられるでしょう。
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