とりあえず要介護認定だけ受けるべき?メリットデメリットや介護保険の賢い使い方

「介護保険サービスは利用しないけど要介護認定だけ受けることはできる?」
「とりあえず要介護認定だけ受ける場合に注意することは?」
と気になっている方のために、要介護認定だけを受けるケースについてまとめました。
介護保険サービスを利用する予定がないときに要介護認定を受けるメリットデメリット、注意点や申請手順を解説し、介護保険を上手に活用する方法を紹介します。
要介護認定とは?

要介護認定とは、寝たきりや認知症などで日常生活に支障が出て介護や支援が必要になった場合に、その人がどのくらい介護が必要かを判定するしくみです。
介護認定審査会で要支援1・2、要介護1〜5の7段階、または非該当(自立)のいずれかに認定されます。
評価の基準は身体の状態や認知機能、ADL(日常生活動作)の低下などです。
要介護認定を受けると、認定された要介護度に応じた介護保険サービスを利用できます。
要介護認定だけ受けるメリット

- すぐに介護保険サービスが利用できる
- 将来の生活費や備えの見通しが立てやすくなる
- 介護レベルの重度化を予防する機会になる
介護保険サービスを使う予定がなくても要介護認定を受けておくと、上記のメリットがあります。
要介護認定のメリットデメリットについて詳しくはこちら↓
【要介護認定のメリット・デメリット】要介護認定で受けられる公的サービスや特徴を解説
すぐに介護保険サービスが利用できる
事前に要介護認定を受けておけば、心身の変化やケガ・病気など予期せぬ事態で急に介護保険サービスが必要になったとき、速やかに介護保険サービスを利用できるでしょう。
要介護認定は申請から認定通知まで少なくとも30日ほどかかります。そのため、介護保険サービスが必要になってから申請すると介護保険サービスが利用できるまでにタイムラグができてしまいます。
要介護認定を受けておけばすぐに介護保険サービスを利用できる環境となり、安心して過ごせるでしょう。
また、継続的な介護が必要ない時期でも、住宅改修や福祉用具の購入など、一時的な介護保険サービスを利用したい場合にも役立ちます。
将来の生活費や備えの見通しが立てやすくなる
要介護認定で判定された要介護度に応じて介護保険で賄われる月額費用の限度額が決まるため、介護費用の自己負担額を具体的に把握できます。
たとえば、3万円分の介護保険サービスを利用した際は自己負担額が3,000円で済むなど支払う金額が確認でき、実際に必要な生活費・介護費の見通しを立てることが可能です。
介護保険サービスを利用した際の支出をシミュレーションすると、必要な介護資金の額が想定でき、ライフプランを立てやすくなるでしょう。
介護レベルの重度化を予防する機会になる
要介護度が低い段階で運動、リハビリ、食事指導など専門家による介護予防のサービスを受けると、介護状態の重度化を遅らせたり、健康状態を維持したりする効果が期待できます。
要介護認定を受けた後は、住宅改修や福祉用具レンタルなどの介護予防サービスの利用が可能です。
手すりの設置や段差の解消といった住宅改修で転倒リスクを減らし、安全な自立生活を継続できるでしょう。
怪我を予防できれば、要介護度の進行を抑制し、長期間にわたって自立した生活を維持することもできます。
要介護認定だけ受けるデメリット

- 更新手続きをしなければならない
- 区分変更申請が必要な場合がある
- 心理的な抵抗を感じる場合がある
介護保険サービスを利用せず要介護認定だけを受けることには、上記の注意点もあります。
更新手続きをしなければならない
要介護認定には有効期限があり、継続したい場合は更新手続きが必要です。
新規認定の場合は最長12か月、更新認定の場合は要介護度に応じて設定されている12~36か月の有効期間内に、市区町村から届く更新手続きの案内に従って更新手続きをしましょう。
更新手続きには「更新申請書の提出」「介護認定調査の受診」「主治医の意見書の提出」など、初回とほぼ同様の書類準備や調査が必要であるため、実際に介護保険サービスを利用しない場合は負担に感じるかもしれません。
区分変更申請が必要な場合がある
要介護認定を受けた時点と実際に介護保険サービスを利用しようとした時点で、心身の状況や生活環境が変化していることがあります。
たとえば、要支援2で認定を受けていた方が、その後病気や怪我により要介護3相当の状態になった場合、要支援2のままでは必要な介護保険サービスを利用できません。
その場合は区分変更申請を行い、現在の状況に応じた要介護度に変更してもらう必要があります。
区分変更申請は、要介護認定の更新時期を待たず身体状況などに変化があれば随時申請が可能です。
心理的な抵抗を感じる場合がある
要介護認定を受けることは「介護が必要な人」と公的に認められることであるため、心理的な抵抗を感じる高齢者も少なくありません。
まだ元気で自立した生活を送っている高齢者にとって要介護認定を受けることは、自尊心を傷つけたり自己肯定感を低下させたりする要因となることがあるでしょう。
「将来的に介護保険サービスが必要になる」ことを示唆するものでもあるため、不安を煽ったり衰えを改めて突き付けられて精神的にショックを受けたりすることもあります。
要介護認定はいつ受けるべき?

要介護認定を受けるタイミングは心身の状況や生活スタイルなどによって異なります。
病気やけがで入院中の場合は、退院予定日の1~2か月前に要介護認定の申請をするのが適切です。要介護認定は申請から認定がおりるまで約30日かかるため、退院後すぐ介護保険サービスを利用するには退院してからの申請では遅いことがあります。
自宅生活の場合は食事、排せつ、入浴などの日常生活動作にサポートが必要なことが多くなったり、買い物や掃除など身の回りのことが困難になったりした際に申請しましょう。
また、認知症を発症した場合はできるだけ早く要介護認定を申請したほうがいいといわれています。物忘れやうつの症状が出たら、速やかに申請して必要な介護保険サービスとつながりましょう。
要介護認定を受けるタイミングについてはこちら↓
要介護認定を受けるベストなタイミングは?入院中の場合やとりあえず認定される際に注意点
要介護認定の申請方法

- 要介護認定の申請
- 訪問調査
- 主治医の意見書
- 一次判定
- 二次判定
- 認定結果通知
要介護認定の申請は、主に上記の流れで進行します。
要介護認定を受ける申請者本人または家族が、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに必要書類を提出し、申請しましょう。
ケアマネジャーや病院の相談員などが代理で申請することも可能です。
申請が受理されると、市区町村の職員や委託された調査員が訪問し、心身の状態や日常生活動作などについて詳しい認定調査を行います。同時に、市区町村から主治医に意見書の作成が依頼されるでしょう。
調査結果はコンピューターに入力され、一次判定として介護の必要度が自動的に推計されます。この時点ではあくまで機械的な判定であるため、本人の生活背景や特別な事情は反映されません。
続いて医師や看護師、ケアマネジャーなどの専門職で構成される「介護認定審査会」が二次判定を担当します。
一次判定の結果や生活環境など、数値化されにくいさまざまなことが考慮されて最終的な要介護度が決定し、市区町村から申請者へ認定結果が通知される流れです。
介護保険サービスを使わないとどうなる?

要介護認定だけを受け、介護保険サービスを利用しないと損をするのかどうかを解説します。
介護保険料は戻らない
40歳以降、すべての国民は介護保険料を支払う義務が発生し、介護保険サービスを利用しなくても介護保険料が返還されることはありません。
介護保険は介護が必要な方へ適切な支援やサービスが行き届くように社会全体で支えることが目的です。そのため、介護保険サービスを利用しないからといって個別に払い戻すことはされず、介護保険サービスを利用し始めても支払いは継続します。
介護保険を使わないと損?
介護保険料は、介護保険サービスを利用しても利用していなくても支払わなければならないため、利用しなければ損と考えられることがあります。
しかし、最も経済的なのは長期間にわたって自立した生活を維持し続けることです。
「介護保険料を支払っているから」と不必要な介護保険サービスまで利用してしまうと、自立を妨げてかえって介護レベルが重度化する可能性も考えられます。
要介護度が上がればあがるほど介護費用は増加する傾向にあるため、自立生活が長ければ長いほど経済的負担は抑えられるでしょう。
適切な介護保険サービスを適切な分だけ利用することが介護レベルの重度化予防につながり、自立生活を長期化させるポイントです。
要介護認定を受けなくても利用できるサービス

要介護認定を受けていなくても、介護保険外のサービスを利用できます。
介護保険外サービスは、介護保険サービスでは利用できない家事代行や外出支援など利用者のニーズに合った自由度の高いサービスを受けられる点がメリットです。
介護保険外のサービスは民間だけではなく市区町村や社会福祉協議会、シルバー人材センターも提供しています。
全額自己負担ですが、すぐに支援してほしい場合やほんの一時的なサポートが必要な場合などでも利用しやすいサービスです。
要介護認定を申請している暇がないときや、要介護認定を受けるほどのサポートは必要ないときなどは、利用を検討してみるのもいいでしょう。
介護保険外サービスについては詳しくはこちら↓
介護保険外サービスって何?種類や料金を事例付きで紹介!
要介護認定は受けておくと安心◎更新手続きなどに注意
介護保険サービスを利用する予定がなくても要介護認定だけ受けておくと、必要なときすぐに介護保険サービスを受けられます。
予算計画も立てやすくなり介護予防や福祉用具レンタルなどの介護予防サービスも受けられるため、要介護度が重度化することを防げるでしょう。
一方で、定期的な更新手続きや心理的な負担などのデメリットも考慮しなければなりません。
今すぐ介護保険サービスが必要かどうかだけではなく、本人や家族の将来に備えた安心感や心身状況に合わせて要介護認定を受けるかどうかを判断しましょう。
介護保険サービスは不必要に使いすぎず予防の段階から上手に取り入れると、自立を長く維持する効果が期待できます。メリットとデメリットを理解したうえで、必要なときに適切なサービスとつながれるよう、早めに要介護認定の申請を検討しましょう。
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