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2025.12.22

高齢者の感染症で気を付けるべき種類は?加齢ならではの特徴や自宅でできる対策など

高齢者の感染症で気を付けるべき種類は?加齢ならではの特徴や自宅でできる対策など

「高齢者はどんな感染症に気を付けるべきかな?」
「高齢者を守る感染症対策を知りたい」

高齢者はからだのさまざまな機能が低下するため、感染症にかかるリスクが高いといわれています。回復に時間がかかり重症化しやすいため、予防が肝心です。

高齢者が注意すべき感染症の種類や高齢者ならではの特徴、注意点、対策を解説します。感染症対策や免疫力向上の方法についても触れているため、ぜひ参考にしてください。

高齢者は感染症にかかりやすい?

高齢者は感染症にかかりやすい?
  • 免疫力低下
  • 防御機能の弱体化
  • 感染しやすい環境

高齢者は、主に上記の理由から感染症にかかりやすいと考えられています。

免疫力低下

高齢者が感染症にかかりやすい最大の原因は、加齢に伴う「免疫機能の低下」です。体には、ウイルスなどの病原体を攻撃する「T細胞」という免疫細胞がありますが、この細胞を作り出す「胸腺」という器官は加齢とともに萎縮してしまいます。

その結果、新しいT細胞細胞が十分に作られなくなるため、病原体への反応や攻撃力が弱まってしまうでしょう。加齢だけではなく、ストレスや生活習慣の乱れ、低栄養なども免疫力低下の原因です。

高齢者の低栄養について詳しくはこちら↓
【管理栄養士監修】高齢者の低栄養を予防するための食事レシピ

防御機能の弱体化

高齢になると体に本来備わっている防御機能が徐々に弱まり、病原体が体内に侵入しやすくなります。具体的には、皮膚のバリア機能低下や咳反射の鈍化などです。

加齢によって皮膚が乾燥したりひび割れたりしやすくなると、病原体の侵入口となってしまうでしょう。また、咳やくしゃみなどの反射は、本来病原体を体外に排出するための防御反応です。加齢によって筋力や神経、反射速度が低下すると十分な力を出せず、咳で病原体を排出しきれない場合が増えてしまいます。

また、高齢者は唾液の分泌量が減りやすいことや入れ歯の使用などが理由で口腔内のバリア機能も低下しがちです。バリア機能低下によって口腔内が乾燥したり病原体の増殖を抑えたりする働きが弱まると、口腔内から病原体が体内に侵入し、感染症を引き起こすリスクが高まるでしょう。

感染しやすい環境

介護施設やグループホームなど「集団生活の場」は、構造的に感染症が広がりやすい環境にあります。食事やレクリエーションなどで密になりやすい空間、介助に伴う接触、ドアノブや手すりなど共用物の多さなどは、感染リスクを高める大きな原因です。

感染源が持ち込まれてしまえば拡散しやすく、クラスターを引き起こすおそれもあります。

高齢者が警戒するべき感染症一覧

高齢者が警戒するべき感染症一覧
  • インフルエンザ
  • 感染性胃腸炎
  • 新型コロナウイルス
  • 肺炎
  • 尿路感染
  • 疥癬
  • MRSA

高齢者は、主に上記のような感染症に警戒して生活する必要があります。

インフルエンザ

38度以上の高熱、頭痛、全身のだるさ、関節痛などが主な症状です。ただし高齢者は、典型的な症状が出にくくても体の中でウイルスが増殖し、肺炎や気管支炎などの合併症を一気に引き起こすリスクがあります。

特に、呼吸器疾患や心疾患、糖尿病など持病がある場合は特に重症化しやすいため、徹底した予防が重要です。

毎年12月から3月頃の流行期は、単なる風邪だと思ってもインフルエンザを疑い、早めに医療機関を受診しましょう。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、細菌やウイルスの感染によって胃や腸に炎症が起こり、急な吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こす疾患です。高齢者はもともと体内の水分量が少なく、のどの渇きも感じにくいため、嘔吐や下痢などがあると気づかないうちに重度の脱水に陥ることがあります。

脱水で血液がドロドロになると、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を誘発し、最悪の場合は寝たきりや認知機能の低下につながるおそれもあるでしょう。代表的な感染性胃腸炎としては、腸管出血性大腸菌感染症やノロウイルス感染症が挙げられます。

腸管出血性大腸菌感染症はO157などが原因菌となり、腹痛や血便、発熱などを引き起こす疾患です。ノロウイルス感染症は、汚染された食品の摂取や感染者の嘔吐物や便に触れることで、突然の嘔吐や水様性の下痢、腹痛などの症状が現れます。

いずれも重症化する前に対処する必要があるため、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスは、発熱や咳、鼻水、全身倦怠感などの症状が特徴ですが、高齢者の場合は熱が高く上がらないことも少なくありません。様子を見ているうちに重症化してしまうリスクがあるため、最新の注意が必要です。息苦しさや普段より呼吸が浅い・早いと感じた場合は、肺炎を発症している可能性もあるでしょう。

また、以前よく見られた「味覚・嗅覚障害」は変異株によって少なくなっており、代わりに咳が長引く傾向があるとされています。高齢者は咳による肋骨の骨折やフレイルの進行などにも気を配らなければなりません。

肺炎

肺炎は日本人の死因の上位を占める疾患で、高齢者にとっても非常に危険です。一般的な症状は発熱、咳、黄色や緑色の痰、息切れなどですが、高齢者の場合はこれらがはっきりと現れないことが最大の特徴です。いつもよりぼんやりしている、混乱するなどの症状しかみられないこともあり、気づいたときには重症化しているケースが少なくありません。

また、治療のための入院生活で足腰の筋肉が衰えたり、認知機能が低下したりして、そのまま寝たきりになるリスクもあります。「ただの風邪」「年のせい」と自己判断せず、いつもと違う様子があれば早期に受診しましょう。

尿路感染

尿路感染症は、膀胱や尿道、腎臓など尿の通り道に細菌が侵入して炎症が生じる感染症です。本来は排尿時の痛みや頻尿が特徴ですが、高齢者の場合、尿の濁りや臭いの強さなどしか感じず、痛みや不快感を本人が訴えないケースが多々あります。

発熱を伴う場合は「原因不明の発熱」とされ、発見が遅れて細菌が腎臓や全身に回ってしまうことも少なくありません。

特に寝たきりなどでオムツを着用している場合は細菌が増えやすく、尿の通り道に細菌が付いて尿路感染を起こしやすくなります。

こまめにオムツ交換する、排尿を我慢しない、水分補給するなど日々の習慣で予防が可能です。

疥癬

疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる感染症で、介護施設で最も集団感染を起こしやすい皮膚病のひとつです。

主な症状は「激しいかゆみ」と「赤い発疹」で、ヒゼンダニが活発になる夜間に痒みが強くなるのが最大の特徴です。皮膚同士の接触や、寝具・タオルの共用によって感染が広がります。

高齢者は皮膚が乾燥しやすく免疫力も低下しているため、疥癬に感染しやすい傾向があるでしょう。ダニが爆発的に増殖して重症化すると、白っぽい厚いかさぶたができる「角化型疥癬(かくかがたかいせん)」になることがあります。

MRSA

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは、多くの抗生物質に対する耐性を持ってしまった「黄色ブドウ球菌」のことです。本来は皮膚などにいるありふれた菌ですが、体力が落ちている高齢者が感染すると薬が効きにくく、重症化しやすいといわれています。

特に注意が必要なのは、床ずれなど皮膚のトラブルがある方や、チューブ類を挿入している方です。そこが菌の入り口となり、皮膚感染症や肺炎を引き起こすことがあるでしょう。

高齢者の基本的な感染症対策

高齢者の基本的な感染症対策
  • 手洗い・うがい
  • 体を清潔に保つ
  • 予防接種

高齢者が一度体調を崩すと、さまざまなリスクが生じます。上記のような対策で日頃から感染症を予防する習慣を身に付けることが重要です。

高齢者の風邪予防について詳しくはこちら↓
高齢者は風邪予防が重要!気を付けるべき症状や予防が期待できる運動・食べ物など

手洗い・うがい

感染症は手指や喉などの粘膜から体内に侵入することが多いため、手洗い・うがいを徹底すると感染症を予防できる可能性が高まります。外出後には必ず手洗い・うがいを行い、感染症の原因となる細菌やウイルスを体内に侵入させないように洗い流しましょう。

手洗いは、ハンドソープを使って指の間や手首まで洗い流すのがポイントです。うがいは、直接空気にさらされている口の中の粘膜に付いた細菌やウイルスを洗い流すために、喉の奥や口の中全体をすすぎます。

外出後の手洗いに加え、食事の前やトイレの後にも手洗いを行うと感染症のリスクを下げられるでしょう。手洗いを繰り返すと手指が乾燥しやすくなるため、手洗い後の保湿ケアも大切です。手指が乾燥してひび割れなどを起こすと、そこから病原体が侵入してかえって感染リスクを高めてしまうこともあります。

手洗い後は水分をしっかり拭き取り、保湿クリームなどで保湿しましょう。

体を清潔に保つ

体を清潔に保つことは、感染症予防の基本であり、最も有効な対策の一つです。寒い季節は入浴が億劫になりがちですが、入浴は皮膚についた細菌やウイルスを物理的に洗い流す効果が期待できます。

特に、陰部や足指などの汚れが溜まりやすい部位を清潔にすると、高齢者に多い尿路感染症などの直接的な予防につながるでしょう。

また、入浴で体が温まると血行が良くなり、免疫機能の働きを助ける効果も期待できます

予防接種

予防接種により感染症の重症化リスクを大幅に抑えることが可能です。特にインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、新型コロナウイルスワクチンは高齢者に推奨されています。

いずれのワクチンも、接種すると重症な肺炎などになるのを予防可能です。基礎疾患を持つ高齢者は感染症にかかると重症化しやすいため、予防接種は命を守るうえで有効な対策だといえます。

インフルエンザは毎年冬になると流行するため、10~11月など流行前に予防接種を受けておくと良いでしょう。予防接種を受ける必要性やタイミングは、かかりつけ医に相談して決めるのが安心です。

高齢者の免疫力を向上させるためにできること

高齢者の免疫力を向上させるためにできること
  • 規則正しい生活習慣
  • 栄養バランスの取れた食事
  • 適度運動

上記3点を意識すると、高齢者の免疫力を向上させられる可能性があります。

規則正しい生活習慣

規則正しい生活習慣は、薬やワクチンと同じくらい重要な「免疫ケア」の土台です。免疫力の低下は、加齢だけではなく睡眠不足やストレス、疲れなどが原因で起こる場合があります。免疫細胞の働きは、自律神経のバランスと深く関係しているため、不規則な生活で自律神経が乱れるとウイルスと戦う力が弱まってしまうでしょう

ただでさえ加齢により免疫力が低下している高齢者にとって、生活リズムの乱れは感染リスクをさらに高める大きな要因となります。

毎日決まった時間に起床・就寝する、朝昼夕の3食を一定の時間にとるなど生活習慣を整えることで、免疫力を上げられるでしょう。

栄養バランスの取れた食事

食事は、健康な体づくりのために気を配るべきことのひとつです。高齢者は食欲が低下して栄養が偏りやすくなりますが、免疫細胞を活性化させるためには「主食・主菜・副菜」がそろったバランスの良い食事が欠かせません。

特に免疫細胞の材料となるタンパク質や細胞の老化を防ぐビタミンCを意識して摂りましょう。ウイルスと戦う力をつけ、免疫細胞の正常化に役立つといわれています。

高齢者が風邪をひいたときの食事について詳しくはこちら↓
【管理栄養士監修】高齢者が風邪をひいたときにおすすめの食事!摂りたい栄養やレシピなど

適度な運動

適度な運動を継続すると、免疫機能が向上するといわれています。運動によって血行やリンパの流れが良くなると、免疫細胞が体中をスムーズに移動できるようになるでしょう。

また、体温が向上するため、免疫細胞が活発化するとされています。そのため、病原体に感染した細胞を見つけやすくなったり、免疫力が向上したりし、感染症予防につながるでしょう。

適度な運動とは、無理なくできる負荷で週3回、1日20分以上行うもので、具体的には少し汗ばむ程度のウォーキングやヨガなどです。外出時には階段を使う、一駅分歩く、ラジオ体操を毎日行うといったことでも効果が得られるでしょう。

高齢者が自宅でできる運動について詳しくはこちら↓
理学療法士考案!高齢者が自宅でできる運動を動画で紹介

生活リハビリデイサービスりふりの感染対策

生活リハビリデイサービスりふりの感染対策

生活リハビリデイサービスりふりでは、利用者様とそのご家族に安心してご利用いただくため、手洗い・検温・手指消毒・マスクの着用などの感染対策を徹底しています。マスクの着用は可能な限り利用者様にもご協力いただき、安心して通える施設として運営中です。

また、施設内には加湿器を設置して最適な湿度を保つとともに、定期的な換気による空気の入れ替えを実施しています。さらに、高い除菌力を持ちながら人体には優しい「カンファ水」を清掃や除菌に導入するなど、安全で清潔な空間づくりにも余念がありません。

生活リハビリデイサービスりふりの感染対策について詳しくはこちら↓
りふりの感染対策!デイサービスならではの徹底ぶりをご紹介

高齢者特有の症状を把握して適切な感染症対策を

高齢者は、免疫力の低下や体の防御機能の弱体化によって感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。インフルエンザや新型コロナウイルス、肺炎、尿路感染症、疥癬などは、高齢者が警戒するべき感染症です。

高齢者がかかると危険な感染症を把握しておくと、早期発見や予防につながり、適切な対応ができるでしょう。

自宅でできる対策としては、手洗い・うがいといった基本的な対策に加え、体を清潔に保つ、予防接種を受けるなどの対策が挙げられます。また、規則正しい生活習慣やバランスの良い食事、適度な運動など免疫力を向上させる習慣づくりも大切です。

感染症のリスクをゼロにすることは難しいですが、日々の積み重ねで感染症を予防する力を高められるでしょう。




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