【管理栄養士監修】高齢者のカロリー不足を補う方法

「高齢者のカロリー不足が心配だな」
「高齢者がカロリー不足にならないためにどんな対策をすればいいのだろう」
など知りたい方のために、高齢者のカロリー不足について情報をまとめました。
高齢者は、活動量の低下や消化吸収機能の低下によって食事量が低下しやすく、摂取カロリーが不十分である場合が多いとされています。
カロリー不足が引き起こすリスクや対処法などを解説しているため、ぜひ参考にしてください。
高齢者に必要なカロリーは?
身体活動レベル | 性別 | 65~74歳 | 75歳以上 |
---|---|---|---|
低い (レベルⅠ) | ♂ | 2,100 | 1,850 |
♀ | 1,850 | 1,450 | |
ふつう (レベルⅡ) | ♂ | 2,350 | 2,250 |
♀ | 1,850 | 1,750 | |
高い (レベルⅢ) | ♂ | 2,650 | – |
♀ | 2,050 | – |
※身体活動レベルについて:「ふつう」は自立している者、「低い」は自宅にいてほとんど外出しない者に相当する。「低い」は高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている者にも適用できる値である。
引用:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、上記のように性別・年齢・身体活動レベルごとに1日に必要なエネルギー量が示されています。
身体活動レベルとは、1日にどれくらい身体を動かしているかを表す指標です。低い(レベルⅠ)・ふつう(レベルⅡ)・高い(レベルⅢ)の3段階に分けられています。
たとえば高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている高齢者の身体活動レベルは、低い(レベルⅠ)に該当します。活動量に見合ったエネルギーをとることが、健康維持のポイントです。
また、上記の数値はあくまで目安であり、身長や体重、病気の有無などによって必要量が異なるケースがある点に注意しましょう。
高齢者がカロリー不足になったらどうなる?

- 体重の減少や筋力の低下
- 寝たきりのリスクが高まる
- 免疫力が落ち感染症にかかりやすくなる
高齢者が必要なカロリーを十分に摂取できていない状態が続くと、体に上記のような影響が現れます。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
体重の減少や筋力の低下
体が必要とするカロリーを摂取できていないと、体は筋肉を分解してエネルギーとして利用します。その結果、筋肉量が減るため、体重が減ってしまうのです。
高齢者は元々、加齢の影響で筋繊維の数が減ったり筋繊維自体が萎縮したりして、筋肉量が低下しやすいといわれています。カロリー不足に陥ると、さらに筋肉量が低下しやすくなるでしょう。
筋肉量の低下は、歩行や立ち上がりといった日常動作の低下やサルコペニアにつながります。身体機能が衰えるため、転倒して骨折などの怪我をするリスクが高まるでしょう。
また、口や喉の筋肉が衰えると、食べ物や唾液をうまく飲み込んだり吐き出したりすることが困難になります。食べ物や唾液が誤って気管に入ると、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうでしょう。
誤嚥性肺炎は高齢者にとって命に関わる場合があるため、安全に生活を続けるためにはカロリー不足を防ぐことが重要です。
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寝たきりのリスクが高まる
カロリー不足が続いて体重や筋力が低下すると、日常生活に必要な動作が困難になります。外出の頻度が減ったり安静にしている時間が増えたりして余計に筋力が低下すると、次第に身体機能が低下していき、寝たきりのリスクが高まるでしょう。
寝たきりになるとエネルギー消費量が著しく少なくなるため、食欲が低下して食事量が減ります。その結果、さらにカロリー不足を招くという悪循環に陥ってしまうでしょう。
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免疫力が落ち感染症にかかりやすくなる
カロリー不足が続くと免疫細胞に十分なエネルギーが行き渡らず免疫機能が低下し、外部からの細菌やウイルスへの抵抗力が弱まるため、風邪などの感染症にかかりやすくなるでしょう。
高齢者は一度体調を崩すと長引きやすく重症化しやすい傾向にあることから、一度の体調不良がきっかけで日常生活の自立度が下がるおそれがあります。
高齢者がカロリー不足になりやすい原因

高齢者は加齢に伴って筋肉量が減少するため、運動不足になりやすい状態です。運動不足でエネルギー消費量が減ると、食欲がわかず食事量が減り、カロリー不足に陥りやすくなります。
また、一人暮らしをしていたり退職して社会とのつながりが減ったりすると孤独感によるストレスを感じ、食事量が低下するケースもあります。
嗜好の変化や噛む力の低下なども、カロリー不足を招く原因です。さまざまな要因が重なって、知らず知らずのうちにカロリー不足に陥っていることがあるため、食事量の変化を見過ごさないようにしましょう。
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高齢者のカロリー不足を補う方法

- 高カロリー高たんぱくな食事を心がける
- 食事の回数を増やす
- 栄養補助食品・プロテイン
高齢者のカロリー不足を補うには、上記3つの方法が挙げられます。高齢者が健やかな毎日を送るために、適切な対策をしましょう。
高カロリー高たんぱくな食事を心がける
高カロリー高たんぱくな食事は、活動するために必要なエネルギーと筋肉の材料となるたんぱく質を摂取できるため、体重や筋肉量の減少を防げる可能性があります。
特にたんぱく質は、筋肉だけではなく内臓など体を作る材料となる大切な栄養素です。カロリーと合わせて十分に摂取すると丈夫な体作りが可能となり、寝たきり防止に役立つでしょう。
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品など良質なたんぱく質を含む食品を意識して摂取し、調理時にはバターやチーズなどを加えてカロリーアップを図るのがおすすめです。
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食事の回数を増やす
食事の回数を増やしたり食事に加えて間食をしたりすると、カロリー不足を防ぐことが可能です。一度に多くの食事をするのが困難な高齢者でも、食事回数の増加や間食によって、食事だけで補いきれないカロリーを摂取できます。
間食には、少量でカロリーとたんぱく質を摂取できるプリンやカステラ、ゆで卵、ギリシャヨーグルトなどがおすすめです。
栄養補助食品・プロテイン
食事だけで十分なカロリーやたんぱく質が摂取ができない場合、栄養補助食品やプロテインを活用しましょう。栄養補助食品は少量でエネルギーやたんぱく質を摂取できる製品が多いため、食が細くなった高齢者でも無理なく摂取可能です。
プロテインはドリンクタイプがよく知られていますが、料理や飲み物に混ぜて使う粉末タイプも売られています。紅茶やコーヒ、味噌汁に混ぜるだけで手軽にたんぱく質を補えるため、高齢者のカロリー・たんぱく質不足に役立つでしょう。
高齢者のカロリー不足を防いで健やかな老後を
高齢者は、運動量の減少や孤独感によるストレス、噛む力の低下などからカロリー不足に陥りやすい状態です。高齢者がカロリー不足に陥ると、体重や筋肉量の低下、免疫力の低下など日常生活にさまざまな影響を及ぼします。寝たきりのリスクも高まるため、カロリー不足は早めの対処が肝心です。
高カロリー高たんぱく質な食事を心がけ、食事回数の増加や間食を取り入れること、栄養補助食品やプロテインの活用などで対策しましょう。
毎日の食事を工夫して必要なカロリーを摂取することが、健康的で自立した生活を支えるカギになります。
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PROFILE

管理栄養士
今井尚美
(Imai Naomi)
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