サルコペニアとは?原因・症状・対策などについて。廃用症候群やフレイルとの違いも
「サルコペニアって何?どうやってわかるの?」
「サルコペニアを予防する方法を知りたい」
と疑問を持っている方のために、サルコペニアとは何かについて具体的にまとめました。
健康なうちから対策していれば、健康な筋肉を少しでも長く維持できてサルコペニアを予防できるでしょう。
サルコペニアの判断基準や予防法、似ている他の症状について詳しく解説しているので、身体機能の衰えを感じている方はぜひ参考にしてみてください。
サルコペニアとは?
サルコペニアとは、加齢などにより筋肉量が低下し、筋力や身体機能が低下した状態です。
健康な人でも40代から筋肉量が少しずつ減少するといわれており、何も対策しなければ高齢になるにつれて日常生活にも影響が出るほどになるでしょう。
疲れやすくなる、歩くのが遅くなるなどの症状からはじまり、進行すると、飲食物が飲み込みにくくなったり、呼吸がしにくくなったりと、生理機能にも支障が出る可能性があります。
サルコペニアを放置していると活動量が低下し、認知機能の衰えや、介護が必要なほどに身体機能が低下するリスクが高まるので注意が必要です。
サルコペニアの予防には、筋肉の健康を維持する運動と食事がカギとなります。
サルコペニアの原因・症状
サルコペニアの主な原因と症状は、筋肉の衰えによる運動機能の低下です。
筋肉が衰える原因と、筋肉量が減ることで起こる症状について、詳しく解説します。
原因
- 加齢
- 運動不足
- タンパク質不足
- 疾患による筋力低下
サルコペニアは上記が主な原因といわれています。
加齢に伴って筋肉量はある程度減少しますが、運動不足や食事量の低下が重なると、筋肉量の減少が加速してしまうでしょう。
筋肉量が減ると運動機能が衰え、運動が億劫になり、さらなる運動不足を招くなど、悪循環が発生します。
また、運動量が減るとエネルギー消費量が減り、食欲低下によるタンパク質不足を招くでしょう。
タンパク質は筋肉の主成分であるため、筋肉量減少の大きな原因となる可能性があります。
疾患による運動量の低下も、筋肉量の減少を招きます。
筋ジストロフィーや皮膚筋炎といった病気は、筋肉に直接影響を及ぼし、運動能力が著しく低下することがあります。
症状
- 立ち上がりや歩行の際に支えが必要になる
- 頻繁につまずく
- 短距離の移動や立っているだけでも疲れやすい
- キャップやふたを開けるのが困難になる
- 階段が面倒になる
サルコペニアになると、上記のような症状があらわれて日常生活に影響が出てきます。
また、サルコペニアは筋肉による身体活動全般の低下を招くため、嚥下機能・呼吸機能にまで影響することもあり、QOLが大幅に低下するリスクもあるのです。
簡単チェック
【サルコペニアの診断基準】
項目 | 測定方法 | 男性の基準 | 女性の基準 |
---|---|---|---|
年齢 | – | 65歳以上 | 65歳以上 |
筋力 | 握力計測 | 28kg未満 | 18kg未満 |
機能 | 歩行速度テスト | 1秒間あたり1.0m未満 | 1秒間あたり1.0m未満 |
5回椅子立ち上がり | 12秒以上 | 12秒以上 | |
筋肉量 (BIA法) | 生体電気インピーダンス法 (BIA法) | 7.0kg/㎡未満 | 5.7kg/㎡未満 |
筋肉量 (DXA法) | 二重エネルギーX線吸収法 (DXA法) | 7.0kg/㎡未満 | 5.4kg/㎡未満 |
サルコペニアは、筋肉の量や機能を測定して診断され、なかでも筋肉量の低下が顕著に見られるのがサルコペニアの特徴です。
信号が青の間に 横断歩道を渡り切れないなど、以前できていたことができなくなっている場合、サルコペニアの可能性があります。
セルフチェックをするには、座った状態で「指輪っかテスト」を試してみてください。
両手の親指と人差し指で輪っかを作り、利き足と反対の足のふくらはぎで一番太い部分を囲ってみましょう。
指とふくらはぎの間に隙間ができると、筋肉量が少なくサルコペニアである可能性が高いといえます。
サルコペニア・フレイル・廃用症候群
サルコペニアと似た状態として、「フレイル」と「廃用症候群」があります。
サルコペニアが主に体の機能が低下した状態であることに対して、フレイルは「虚弱」を意味し、身体的なものから精神的・社会的な機能が衰えている状態を指します。
廃用症候群は、怪我などによる長期的な安静が原因で起こりうる身体的・精神的機能が低下した状態です。
フレイルについて
種類 | 主な症状 |
---|---|
身体的フレイル | 筋力低下 疲労感 体重減少 |
精神・心理的フレイル | 認知機能の低下 うつ状態 |
社会的フレイル | 社会的孤立 社会参加の減少 |
フレイルとは、高齢者が健康な状態から介護が必要な状態へと移行する過程で、身体的・精神的・社会的な機能が衰えている状態を表します。
以前は問題なかった日常活動で疲れやすくなったり、物忘れや判断力の低下、気分の落ち込みが激しくなるなどの症状が見られます。
友人や家族との交流が減るなどで社会的に孤立することも、フレイルのひとつです。
サルコペニアの発症がきっかけとなって、フレイルに陥る可能性があるため注意が必要です。
フレイルは、サルコペニアと関連が深く、健康寿命に大きくかかわっています。
フレイルについて詳しくはこちら↓
フレイルとは?症状や原因から予防方法までわかりやすく解説!サルコペニアとの違いも
廃用症候群について
- 筋力や関節の動きが低下する
- 骨が弱くなる
- 心肺機能が低下する
- めまいが頻発する
廃用症候群とは、病気やけがで長期間安静にすることによって、体を動かす時間や強さが減り、上記のようなさまざまな症状が起こる状態です。
特に高齢者や、脳卒中などで寝たきりになった人に多く見られます。
しかし、高齢者だけでなく、子どもや若い人でも病床で長期間過ごすことがあれば発症する可能性があります。
サルコペニアがさまざまな要因で筋肉の量と機能の衰えが見られることに対し、廃用症候群は、長期間の安静を原因とする筋肉・骨・臓器・精神などの機能低下が見られる状態です。
サルコペニア予防は「食事」と「運動」
- サルコペニア予防になる食事
- サルコペニア予防になる運動
筋肉量を増加・維持する「食事」と「運動」が、サルコペニアの予防に有効といわれています。サルコペニアの予防が期待できる食事と運動について解説します。
サルコペニア予防になる食事
栄養素 | 食品例 |
---|---|
たんぱく質 | 鶏肉、牛肉、魚、卵、大豆、大豆製品 |
カルシウム | 牛乳、ヨーグルト、チーズ、豆腐、小松菜、ほうれん草 |
ビタミンD | しいたけ、まいたけ、鮭、いわし、卵黄 |
サルコペニアの予防には、たんぱく質とカルシウム、ビタミンDを意識したバランスの良い食事を意識しましょう。
タンパク質は筋肉の元となり、カルシウムやビタミンDは骨の健康を維持するといわれています。
健康な筋肉と骨は、運動機能の維持にも不可欠です。
1日に必要な摂取量は、以下のとおりです。
栄養素 | 65~74歳男性 | 65~74歳女性 | 75歳以上男性 | 75歳以上女性 |
---|---|---|---|---|
タンパク質(g) | 60 | 50 | 60 | 50 |
ビタミンD(μg) | 8.5 | 8.5 | 8.5 | 8.5 |
カルシウム(mg) | 750 | 650 | 700 | 600 |
1つの栄養素にとらわれすぎず、1日2~3食をバランスよく食べることを意識しましょう。
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高齢者の体重を増やす食べ物│食べても痩せる原因や痩せすぎ対策、筋肉をつけるメニュー紹介
サルコペニア予防になる運動
サルコペニアは、筋力の低下が原因のひとつと考えられるため、筋肉の量と質を維持する運動で予防が期待できます。
特に、全身の筋肉の70%が集まっている下半身の運動がポイントです。
足や腰の筋力をつけて、転倒や骨折、寝たきりを防ぎましょう。
運動は過度な負荷をかけず、心地よい程度で行うことが大切です。
毎日続けられるよう、無理のない範囲で取り組みましょう。
サルコペニア予防にもなる運動について詳しくはこちら↓
【理学療法士考案】座位でもできる高齢者転倒予防トレーニングを動画つきで紹介
食事と運動でサルコペニアを予防しよう
サルコペニアは、加齢や運動不足、栄養不足によって筋力が低下し、運動機能が衰えている状態です。
疲れやすくなった、ボトルや瓶の蓋を空けにくくなったなど、日常生活に変化が出ている方は、サルコペニアかもしれません。
サルコペニアは、栄養バランスの良い食事と適度な運動で予防効果が期待できます。
食べて動くことでサルコペニアを予防し、筋力を維持して健やかな毎日を過ごしましょう。
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