高齢者が体重減少する原因は?対策と注意点などを紹介

「ちゃんと食べているのに高齢者の体重が減っているのはなぜだろう?」
「高齢者の体重減少に有効な対策が知りたい」
高齢者の体重減少に悩んでいる人のために、情報をまとめました。
高齢者が体重減少を放置していると、さまざまな機能が低下していき、寝たきりになるリスクを高めてしまう可能性があります。
高齢者の体重減少について原因や有効な対策、注意点になどを詳しく解説するため、参考にしてください。
高齢者が体重減少しやすい理由

- 筋肉量の減少
- 運動量の減少
- 消化機能の減少
- なんらかの疾患の影響
- 社会からの孤立
高齢者の体重が減ってしまう理由には、上記のようなことが考えられます。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
筋肉量の減少
加齢に伴って筋繊維の数は減り、筋繊維そのものも萎縮するため、高齢になると筋肉量が減少しやすくなります。
筋肉はエネルギーを多く消費する組織です。筋肉量が減るとエネルギー消費率も減り、お腹が空きにくくなるため、食事量の減少を引き起こすでしょう。結果として、しっかり食べているつもりであっても体重が減ってしまうことがあります。
若い頃よりも体を動かす機会が減るため、特に運動習慣がない場合は注意しなければなりせん。
運動量の減少
加齢に伴い筋肉や関節が動かしにくくなったり、社会とのつながりが減って外出の頻度が減ったりすると、運動量が減少します。運動量が減少すると筋肉量が減るため、体重減少につながるでしょう。
また、活動量が減ると空腹を感じにくくなります。知らずしらずのうちに食事量が減ってしまい、結果的に体重が減ることになるでしょう。適度な運動習慣を持つことは、高齢者の体重維持につながります。
消化機能の低下
加齢に伴い胃の粘膜が萎縮すると胃酸の分泌量が減り、小腸や大腸も消化液を分泌する機能や栄養素を吸収する機能が低下します。
消化器系の機能が低下すればしっかり食べても必要な栄養素を体に取り込めないため、体重が減ってしまうのです。
また、腸のぜん動運動が低下すると消化に時間がかかり、食後の不快感や便秘を生じやすくなります。食欲低下や食事量の減少などを引き起こし、体重減少を招く原因になるでしょう。
なんらかの疾患
高齢者の体重減少は加齢のせいだけではなく、何らかの疾患が隠れている可能性があります。急激な体重減少がみられた場合は、特に注意が必要です。
体重が減る疾患として、胃や腸など消化器疾患や糖尿病などの内分泌疾患、うつ病や認知症などが挙げられます。体重の変化から重篤な疾患が見つかるケースもあるため、体重減少がみられたら必要に応じて受診するようにしましょう。
社会からの孤立
高齢になると退職したり一人暮らしになったりして、家族や地域、社会との関わりが薄れるケースが少なくありません。社会から孤立してしまうと介護や福祉の支援を受けることさえできず、食材の買い出しや調理など最低限の生活さえできなくなる場合があります。
独居の場合、孤立感によるストレスも体重が減る原因の一つです。精神的なストレスによって食事に対する意欲が失われ、簡単な料理や栄養バランスが偏った食事で済ませてしまうようになるでしょう。体に必要な栄養素が不足し、体重減少につながる可能性があります。
高齢者の体重減少を放置するとどうなる?

- 身体機能の低下
- 認知機能の低下
- 免疫機能の低下
高齢者の体重減少を放置すると、上記3つの機能が低下する可能性があります。年をとったから体重が減るのは仕方がない、と体重減少を見過ごすと深刻な状況に陥るかもしれません。
身体機能の低下
高齢者の体重減少は多くが筋肉量の減少を伴っているため、放置すると身体機能が著しく低下します。身体機能が低下すると歩行や立ち上がりなどの動作が難しくなり、日常生活を一人で送ることが困難になるでしょう。
その結果、外出の機会が減って引きこもりがちになり、身体機能が一層低下してしまいます。
また、身体機能が低下すると転倒や骨折を引き起こしやすくなるため、寝たきりや要介護状態になるリスクも高まるでしょう。
認知機能の低下
脳はブドウ糖などをエネルギー源としているため、体重減少を引き起こすような食事量や食事内容を続けていると、脳へのエネルギー供給が不足します。その結果、判断力や記憶力などの認知機能が低下して、認知症を引き起こすリスクが高まるでしょう。
実際のところ、東京都健康長寿医療センターの研究によれば、体重減少が起こるような低栄養状態の人は、認知機能低下のリスクが高いことが報告されています。
参考:食生活に要注意─高齢者の低栄養はキケン─│地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
免疫機能の低下
体重減少は体に必要な栄養素が不足している状態であるため、免疫機能が低下するでしょう。免疫細胞のはたらきが不十分となり、細菌やウイルスへの抵抗力が低下します。インフルエンザや風邪など、感染症にかかりやすくなってしまうでしょう。
高齢者は一度感染症にかかると症状が長引きやすく重症化しやすいため、寝たきりの状態になる可能性が高まります。特に、BMIが18.5~20を下回っている場合は注意が必要です。
体に必要な栄養素が不足した低栄養状態であることが多く、免疫力が低下しているおそれがあります。
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食べているのに高齢者が低栄養になる原因や対策、アルブミンを上げる食事など紹介
高齢者の体重減少に有効な対策は?

- エネルギーとタンパク質を意識した食事
- 間食で食事回数を増やす
- 日常で運動を取り入れる
- 社会的なつながりをもつ
高齢者が体重を維持するためには食事や運動、社会的なつながりを意識することが大切です。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
エネルギーとタンパク質を意識した食事
高齢者の体重を増やすためには、エネルギーとタンパク質が欠かせません。エネルギーは体力や脳へのエネルギー確保のために、タンパク質は筋肉量を維持するために必要不可欠です。
多種多様な食材を取り入れて、バランスよくエネルギー量を確保しましょう。手軽にエネルギー摂取できる、栄養補助食品の活用もおすすめです。
タンパク質は肉や魚、大豆製品、乳製品などに多く含まれているため、毎食意識して食事に取り入れましょう。
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間食で食事回数を増やす
高齢になると一度に多くの量を食べられなくなるため、エネルギー摂取量が減りがちです。食事に加えて間食を取り入れると食事回数が増え、エネルギーやタンパク質不足防止につながります。
ヨーグルトやプリン、チーズ、カステラなどの食品は、エネルギーとタンパク質の両方が含まれるため、間食に最適です。
ただし、間食の回数が多すぎたり食事前に間食をとったりすると、満腹感で食事が摂れなくなるおそれがあります。間食は毎日決まった時間に取り入れるようにすれば、食事のリズムを崩さず無理なく継続できるでしょう。
日常に運動を取り入れる
日常的な運動は筋肉量の減少を防げるため、体重減少対策に有効です。筋肉量が維持されると、フレイルや要介護状態になるリスクを減らせる可能性があります。
また、運動すればお腹が空くため、食事量が増えて必要な栄養素を摂取しやすくなるでしょう。ウォーキングやラジオ体操、ダンスなど、無理なく楽しく続けられる内容の運動であれば、習慣化しやすくなります。
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社会的なつながりをもつ
社会とのつながりが減ると引きこもりがちになり、活動量の低下や孤独感、精神的ストレスなどから食欲が低下する高齢者は少なくありません。
近隣住民や友人と関わりを持ったり地域活動に参加したりすると外出のきっかけができるため、活動量が増えて食欲が改善する可能性があります。
また、人との関わりで孤独感がやわらいで食事に対する意欲そのものが取り戻せると、バランスのよい食事を意識できるようになるでしょう。
高齢者の急激な体重減少は特に注意が必要

高齢者の体重が急激に減少すると、重い疾患が隠れている可能性があるため、要注意です。6か月で5%以上または4.5kg以上の体重減少がみられる場合やそのほかの症状がみられる場合は、医療機関を受診しましょう。
重い疾患の例として、胃がんや大腸がんなどの消化器系のがんや糖尿病、甲状腺機能亢進症などが挙げられます。急激に体重の変化がみられた場合は早めに受診すると、疾患に対する適切なアプローチが可能です。
定期的に体重を測定したり食事の様子を見たりして、体重の変化を見逃さないようにしましょう。
体重キープが健康と生活を守るカギ
高齢者の体重が減る原因として、筋肉量の減少や運動量の減少、社会からの孤立などが大きく影響しています。体重減少を放置していると、身体機能の低下にとどまらず、認知機能や免疫機能の低下にも悪影響を及ぼすおそれがあるため、早めの対処が肝心です。
食事や適度な運動、社会的なつながりは体重を維持したり生活の質を向上させるために欠かせません。そのために今日からできることを始めてみましょう。
また、高齢者の急激な体重減少は、何らかの疾患が隠れている場合があるため、医療機関を受診することをおすすめします。
高齢者にとって体重は、健康を維持するためのバロメーターです。体重減少を加齢によるものと放置せず、適切な対応をしましょう。
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