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2025.5.31

【理学療法士監修】歩行補助具の種類や選び方。疾患や身体機能からみる適したものは?

【理学療法士監修】歩行補助具の種類や選び方。疾患や身体機能からみる適したものは?

「歩行補助具はどう選んだらよい?」
「歩行補助具の利用を検討している」

という方のために、疾患や身体機能ごとに適した歩行補助具の種類をまとめました。

代表的な杖・歩行器・歩行車の種類とその特徴、疾患別に見た選び方までわかりやすく解説しているため、適切な歩行補助具を選ぶ参考にしてください。

参考:生活環境づくり杖・歩行器の選定|石川県リハビリテーションセンター

歩行補助具の種類【杖】

歩行補助具の種類【杖】
種類特徴
一本杖一本の支柱で体を支える基本的な杖
軽度の歩行補助に向いており、グリップの形状にはT字型、L字型、オフセット型の3種類
ロフストランドクラッチ握り部分と前腕を支えるカフがあるタイプで、握力が弱い方でも安定した歩行が可能
支持力が高く、単脚タイプと多脚タイプが選べる
肘支持杖(プラットホーム杖)前腕全体で体重を受け止める杖
手だけで体重を支えるのが難しい方に適しており、姿勢が不安定な場合にも効果的
単脚タイプと多脚タイプがある
多点杖の先端が3~4点に分かれ、接地面が広く安定感が高い
バランスを崩しやすい方に適しており、足元の広さに応じて「ワイドスペースタイプ」と「スモールスペースタイプ」がある
歩行器型杖歩行器と杖の中間に位置する形状で地面への接地面積が広いため、立つときや歩行するときの安定性が向上
立位姿勢が不安定な方や歩行が難しい方に適している
松葉杖脇の下で体重を支える設計で、足に負荷をかけられない場合に使用
長さが固定されたタイプと、調整できるタイプがある

杖は使う方の動作を妨げず動かしやすいことが魅力です。軽量で持ち運びがしやすく狭い場所や段差の多い道でも使いやすいため、日常生活に取り入れやすいでしょう。

高齢者が使う杖の選び方はこちら↓
高齢者が使う杖の選び方|介護保険適用の可否や種類別メリットデメリット紹介

歩行補助具の種類【歩行器・歩行車】

歩行補助具の種類【歩行器・歩行車】
種類特徴
歩行器四脚で安定性が高い
立位姿勢や歩行に障害があるが持ち上げる力はある方向き
歩行車車輪がついており、移動できる
立位姿勢と歩行に障害がある方の屋内利用向き
上肢の筋力が弱い場合に適している
三輪歩行車前輪1つが方向転換できる
方向転換しやすいが横にずれやすい
立位姿勢は問題なく歩行がしにくい方向き
椅子付き歩行車車輪が大きく重心が低いため安定しやすい
歩くときにバランスを崩しやすい方や休みながら歩く必要がある方向き
シルバーカー物入れつきの歩行補助
かごの蓋を椅子として利用できる
荷物を持って移動するのが難しい方や歩く際バランスを崩しやすく両手に支持が必要な方向き

歩行器や歩行車は、安定性が高く体重をかけやすいことが特徴です。筋力やバランスの低下が進んでいる場合でも、自立した動作を維持しやすいでしょう。

シルバーカーは前輪が浮きやすいため、バランスを崩しやすい方は重心が前に来る椅子付き歩行車が適しています。

疾患別にみる歩行補助具の選び方

疾患別にみる歩行補助具の選び方

立位や歩行が困難になりがちな7つの疾患別に、適した歩行補助具とその選び方を解説します。

片麻痺(軽度)

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖
  • 交互型歩行器
  • 固定型歩行器
  • 手支持型歩行車
  • 前腕支持型歩行車
  • シルバーカー

片麻痺(軽度)は一側の上下肢の運動麻痺が軽度に残存する状態です。左右のバランスは崩れるものの、ある程度の筋力やバランス能力は残っています。

一本杖やオフセット杖は軽量で扱いやすく、歩行の左右バランスを補うのに適している杖です。ロフストランドクラッチ杖は前腕全体で支えるため、手首が不安定な場合でも使用しやすいでしょう。

片麻痺(重度)

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖

重度の片麻痺は片方の体幹や下肢の筋力が麻痺しており、姿勢保持も困難な状態です。

健常側の手で杖を支えると、歩行時の安定性を保ちやすいでしょう。片手しか使えない場合でも前腕支持型杖であれば、もう一方の手を自由に使えて日常生活の動作がしやすくなります。

円背(えんぱい)

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖
  • 交互型歩行器
  • 固定型歩行器
  • 手支持型歩行車
  • 前腕支持型歩行車
  • シルバーカー

円背とは背骨が前に倒れて姿勢が悪くなる状態で、視界を確保するために顎が上がり、前傾姿勢がさらに進むことが特徴です。

前重心になりやすい円背は、前側で体重を支える機能がある器具が望ましいといわれています。バランスを保てるように、接地面が広い杖や歩行器だとなおよいでしょう。

下肢の骨関節疾患

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖
  • 交互型歩行器
  • 固定型歩行器
  • 手支持型歩行車
  • 前腕支持型歩行車
  • シルバーカー

下肢の骨関節疾患は、膝や股関節の痛み極度のО脚や筋力低下で歩行が不安定な状態です。

関節痛・変形により体重がかけられない側がありますが、もう一方で体重を支えられる場合は、手支持型杖や前腕支持型杖でも歩行をサポートできるでしょう。

下半身全体の機能が衰えている場合は、歩行車で体全体を支える必要があります。

関節リウマチ

  • 前腕支持型杖
  • 前腕支持型歩行車

関節リウマチは関節に痛みや変形があり、その部分に体重や負荷をかけられない状態です。

前腕支持型杖は前腕をカフで支えるため、体重を腕全体で分散でき、手首や指にかかる負担が軽減できます。

前腕支持型杖は関節リウマチの影響で握力が低下している方でも、肘や前腕で体重を支えることが可能です。

失調症

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖
  • 交互型歩行器
  • 手支持型歩行車(※)
  • 前腕支持型歩行車(※)

失調症とは小脳系疾患などによる運動の協調障害で、ふらつきなどが生じる疾患です。

手支持型杖など腕を支えられる歩行補助具であれあば、片側の脚に力が入らないときやふらつきがある場合も体のバランスを保ちやすいでしょう。

※手支持型歩行車や前腕支持型歩行車も使用できますが、両手でしっかりと握れることが前提です。握力が弱い場合はバランスを崩しやすくなります。

パーキンソン病

  • 手支持型杖
  • 前腕支持型杖
  • 交互型歩行器
  • 手支持型歩行車(※)
  • 前腕支持型歩行車(※)

パーキンソン病は安静にしているときに手や足が細かく震え、筋肉が硬くなり動かしにくくなる疾患です。小刻み歩行やすくみ足などで転倒リスクが高くなります。

支えがあれば筋肉を動かしにくくても自立したり足を前に出したりできるでしょう。

※歩行車は両手でしっかりと握る必要があるため、腕に症状があり握力が低下している場合はしっかりと支えられず、転倒のリスクが高まります。

身体機能からみる歩行補助具の選び方

身体機能からみる歩行補助具の選び方

衰えている部位やサポートが必要な動作などによって、選択するべき歩行補助具は異なります。それぞれの身体状況に合った歩行補助具を見ていきましょう。

手に力がない

  • 一本杖
  • 多点杖
  • 歩行器(固定)※
  • 歩行車

手に力がない場合は、多機能を求めるよりも軽量のほうが扱いやすくなります。

ロフストランドクラッチ・プラットホーム杖は前腕で支えるため握力が低くてもバランスを保ちやすいでしょう。

歩行器型杖は、操作に手の力が必要です。握力が低下している方は、慣れるまで練習が必要かもしれません。

足に力がない

  • 一本杖
  • 多点杖
  • 歩行器(固定)
  • 歩行器(交互)
  • 歩行車

足の力が弱い場合は、安定感がある歩行補助具を選ぶ必要があります。握る力が十分な場合は一本杖の使用も可能です。

立位バランスが不安定

  • 歩行器(固定)
  • 歩行器(交互)
  • 歩行車

歩行器は体を囲むように設計されているため、立位バランスが不安定な方でも安心して体重を預けられるでしょう。

歩行車はキャスター付きで腕力が弱い場合の移動をサポートできます。

ものを拾えない

  • 多脚杖
  • 歩行器(固定)
  • 歩行器(交互)
  • 歩行車

ものを拾えない場合は、しゃがむ動作をサポートする器具を選びます。この場合、両手もしくは片手が自由に使えることが条件です。

しゃがむときの体重を支えられる接地面積が広い杖や、重心が広い歩行器が適しています。前腕支持型杖は腕と握りに体重を乗せやすく片方の腕が自由になるため、しゃがむ動作がしやすくなるでしょう。

自分に合った歩行補助具を選んで、安心・安全な毎日を

歩行補助具は、移動を助けるほかに転倒の予防や自立した生活の維持をサポートします。

握力・バランス感覚・関節の状態などの身体状況や屋内・屋外・荷物の有無などの使用場面に応じて適切な歩行補助具を選択しましょう。

一見似ているようでも、杖の種類や歩行器の構造によって得られるサポート力は異なります。自分に合った補助具で、安心・安全な歩行を取り戻しましょう。




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