介護保険の利用で手すりの取り付け!条件や内容、申請から設置までの流れ、注意点などを解説
要介護者のために設置する自宅の手すりは介護保険が利用できることを知っていますか?
自宅を改修して手すりを設置すると10万円以上の費用がかかることも。
しかし、介護保険を使うと通常の費用の1~3割負担となるため、10万円であれば1万円の負担で済みます。
この記事では、手すりの取り付けにおける介護保険の内容や申請、費用の目安、注意点などをお伝えしています。
手すりを取り付けた後に介護保険の申請はできないので、ここで内容や申請の流れを確認しておきましょう。
【この記事でご紹介している内容】
- 手すりの取り付けは介護保険が利用できる
- それぞれの場所に適した手すりの型と費用の目安
- 申請から設置までの流れ
- 業者に依頼する際の注意点
手すりの取り付けは介護保険が利用できる
- 手すりの取り付けにおける介護保険の内容
- 手すり取り付けの介護保険適用条件
- 手すり取り付けの介護保険適用範囲
- 手すりのレンタル・改修工事費用は医療費控除の対象外
- 手すりの種類と特徴
要介護者のために自宅の手すりを取り付ける場合は介護保険を使えば安く依頼できます。
ただし、保険適用には条件があり、限度額も定められています。
まずは、保険利用の条件や内容・適用範囲・手すりの種類等についてチェックしましょう。
手すりの取り付けにおける介護保険の内容
- 自宅の改修が必要な場合
- 自宅改修不要で手すりをレンタルする場合
- 自宅改修不要で手すりの購入は介護保険対象?
介護保険で自宅に手すりを取り付ける際には、自宅の改修が必要か否かによって内容が異なります。
まずは、サービスの違いや限度額についてみていきましょう。
■自宅の改修が必要な場合
自宅の改修が必要な場合は、介護保険サービスの「住宅改修制度」の対象です。
自己負担は1~3割で、限度額は20万円と決められています。
例えば、自宅の手すりの取り付け工事費用が20万円であった場合は、自己負担は2万円~6万円です。
介護保険で給付される18万円~14万円の支払い方法は、自治体によって異なります。
多くの場合は、業者に費用を支払った後に給付される「償還払い」が用いられます。
その他にも、業者には自己負担分を払って給付分は業者に支払われる「受領委任払い」が用いられることが多いでしょう。
なお、介護保険の申請を忘れて費用を支払ってしまうと、保険を利用できなくなってしまうので注意が必要です。
■自宅改修不要で手すりをレンタルする場合
自宅改修が不要な場合は手すりのレンタルが可能で、介護保険が利用できます。
サービスの種類は「福祉用具貸与」で、自己負担は1~3割となります。
例えば、ベッドの横に設置する手すりのレンタルが通常3,000円であるとすると、介護保険適用で300円~900円に。
介護保険の利用でこれだけ費用の負担が軽くなります。
少額でもぜひ活用してみてください。
また、給付金の支払い方法は自治体によって異なるので、事前に地域包括支援センターや役所の福祉窓口で確認するようにしましょう。
■自宅改修不要で手すりの購入は介護保険対象?
自宅改修不要で手すりを購入する場合は、介護保険の「特定福祉用具販売制度」を利用できます。
特定福祉用具販売制度を利用すると、腰掛便座や入浴補助器具などの福祉用具を1~3割負担で購入できます。
上限は年間10万円。
手すりに関しては、浴槽用の手すりのみが対象です。
ただし、指定されている業者から購入したときのみ介護保険が適用となるので注意しましょう。
手すり取り付けの介護保険適用条件
介護保険適用の条件は、要介護認定を受けていることです。
要支援1・2、要介護1~5の方が対象となります。
ただし、自宅を改修して手すりを設置する場合は、要介護者の自宅の改修のみが対象となるので注意が必要です。
一時的に身を寄せている家族の家の改修は全額自己負担となります。
入院中の方、介護施設に入所されている方も原則的には住宅改修制度は利用できません。
特別な事情で手すり設置が必要な場合はケアマネージャーに相談をしましょう。
手すり取り付けの介護保険適用範囲
介護保険サービスの「住宅改修制度」における手すりの設置は、転倒の防止や移動・移乗の補助が目的です。
寝室やトイレ、浴室、玄関、階段、廊下等、要介護者に必要な生活の導線であることが保険適用の目安となります。
なお、家具等の固定されていない場所への手すり設置は介護保険を利用できません。
手すりのレンタル・改修工事費用は医療費控除の対象外
訪問看護や通所リハビリなどのサービスを介護保険で利用すると、自己負担となった分を医療費控除できます。
しかし、手すりのレンタルや改修工事費用は医療費控除の対象外です。
なお、介護保険サービスは原則的には医療費ではありませんが、医療に関するサービスと併用すると医療費控除の対象となるケースもあります。
介護保険サービスにおける医療費控除の詳しい内容は以下をご参照ください↓
国税庁『医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価』
手すりの種類と特徴
【工事が必要な手すりの種類と特徴】
手すり種類 | 特徴 |
水平型 | 移動や姿勢の維持を補助 床と水平に取り付ける |
L字型 | 立ち上がりや姿勢の維持を補助 L字型に取り付ける |
I字型 | 立ち座りや段差の昇降を補助 縦に取り付ける |
可動式 | 立ち上がりや姿勢の維持を補助 手すりを動かせる |
【工事不要な手すりの種類と特徴】
手すり種類 | 特徴 |
据え置き型 | 立ち上がりや姿勢の維持を補助 床に置いて使用する |
突っ張り型 | 起き上がりや立ち上がりを補助 床と天井で突っ張って使用する |
介護保険で取り付けができる手すりはいくつか種類があります。
手すりを選ぶポイントは、設置場所や動作に合っていることです。
例えば、椅子から立ち上がるのを補助したい場合は、据え置き型の手すりを置くことで、立ち上がりがラクになります。
また、入浴の際に体をしっかりと支えたい場合は、工事で取り付けるタイプのL字型や水平型の手すりが適しているでしょう。
このように設置場所や補助したい動作と手すりの特徴を照らし合わせることで、適した手すりを選ぶことができます。
それぞれの場所に適した手すりの種類と費用の目安を紹介
- 階段
- トイレ
- 浴室
- 寝室
- 玄関
設置する場所によって適した手すりの種類や費用が異なります。
業者や自宅の環境によって料金には差がありますが、ここでは一般的な費用の目安をご紹介します。
階段
- まっすぐな階段
- U字型の階段
- L字型の階段
階段はさまざまな形状があり、適した手すりが取り付けられます。
また、階段に手すりを取り付けるには自宅の改修が必要となるので、介護保険の「住宅改修制度」が適用となります。
費用の目安は10万円~20万円程度。
介護保険を使うと1万円~10万円程となります。
階段の長さや手すりを両側につけるか否か等で費用が変わってきます。
ケアマネージャーや業者の方と相談をしながら適した手すりの位置や種類を検討しましょう。
トイレ
- 可動式の手すり
- 水平型の手すり
- L字型の手すり
- I字型の手すり
- 据え置き型の手すり
トイレには、立ち上がりや姿勢の維持を補助する手すりを用いるのが一般的です。
費用の目安は、工事が必要なものは5万円~10万円程度。
介護保険適用で5,000円~1万円程度となります。
据え置き型の手すりのレンタル料は2,500円~3,500円程度が目安で、介護保険を利用すると250円~350円程で済みます。
浴室
- L字型の手すり
- I字型の手すり
- 水平型の手すり
浴室は滑りやすく転倒しやすい場所であるため、工事をして取り付けるタイプの手すりを使うことがほとんどです。
取り付け費用の目安は、3万円~5万円程度。
介護保険適用で、3,000円~5,000円となります。
寝室
- 突っ張り型の手すり
- 据え置き型の手すり
寝室では、起き上がりや立ち上がりを補助するためにベッドや布団の横に手すりを設置することが多いです。
突っ張り型の手すりと据え置き型の手すりはレンタルでき、費用は2,000円~3,000円程度。
介護保険を利用すると200円~300円となります。
玄関
- 据え置き型の手すり
玄関は、靴の着脱や段差の昇降を補助する据え置き型の手すりが役に立ちます。
レンタル費用は4,000円~8,000円程度で、介護保険を利用すると400円~800円となります。
屋内よりも屋外で使用する方が料金が高くなる傾向にあるので注意しましょう。
申請から設置までの流れ
- 自宅を改修する際の申請方法
- レンタルする際の申請方法
手すりの取り付け方法は、レンタルと自宅改修のどちらかです。
レンタルの場合は「福祉用具貸与制度」、自宅改修の場合は「住宅改修制度」の申請が必要となります。
以下でそれぞれの申請の流れを確認しましょう。
自宅を改修する際の申請方法
- ケアマネージャーに相談
- 申請書や工事見積書、施工に関する書類等を市区町村に提出する
- 審査・承認
- 改修工事
- 工事費用を施工業者に支払う
- 領収書等、工事費用がわかる書類を市区町村に提出
- 給付額の審査・決定
- 給付金が支払われる
自宅を改修する際には、まずはケアマネージャーに相談をします。
その後、事前申請を行い、承認がされてから工事に入ります。
承認がされていない状態で工事をしてしまうと住宅改修制度を受けられないので注意が必要です。
また、工事後に領収書などの費用がわかる書類を提出した後に給付金額が決定し支払われます。
レンタルする際の申請方法
- ケアマネージャーに相談
- ケアプランを作成してもらう
- レンタル業者に連絡
- 福祉用具専門相談員がケアプランや希望等をヒアリング
- 適した手すりを決定
- ケアマネージャーに連絡
- 内容を確認後、契約手続き
手すりをレンタルする場合には、まずはケアマネージャーに相談をしてケアプランを作成してもらいます。
その後、レンタル業者に連絡をし、福祉用具専門相談員と話し合い手すりを決定します。
レンタルしたい手すりが決定したら再度ケアマネジャーに連絡をし、内容を確認してもらいましょう。
確認後、業者と契約を交わします。
福祉用具貸与制度は、要介護者の自立と介護をする方の負担を軽減することが目的であるため、ケアプランの作成が必須です。
ケアマネジャーを通さずに契約をしてしまうと全額自己負担になってしまうので注意しましょう。
手すり取り付け工事を業者に依頼する際の注意点
- 見積もりを出してもらう
- 介護保険以外に市区町村の助成金制度があるか確認しておく
- 介護保険申請後に依頼する
- 希望する手すりが取り付け可能か事前確認する
手すりの取り付けを業者に依頼する際にはいくつかの注意点があります。
「思っていたのと違った」「高額の請求が来た」「工事内容が介護保険の対象外だった」等
業者とのトラブルを防ぐためにも注意点をチェックしておきましょう。
見積もりを出してもらう
手すりのレンタル、改修工事どちらも業者によって費用が異なります。
介護保険で安く依頼できるとはいえ、料金が高くなれば自己負担額も高額です。
いくつか気になる業者をピックアップして、それぞれ見積もりを出してもらうようにしましょう。
また、どの業者がよいか迷った場合にはケアマネージャーに相談してみてください。
介護保険以外に市区町村の助成金制度があるか確認しておく
市区町村によっては、手すりの設置に助成金を支給しています。
例えば、横浜市では介護のための住宅改修に最大100万円の助成金制度を設けています。
助成金の金額は、介護保険の利用や所得によって審査・決定されます。
横浜市をはじめ、他の市区町村でも、介護保険が優先され残りの自己負担分が助成金の対象となることが多いようです。
また、助成金の条件なども市区町村によって異なるので、必ず事前にケアマネージャーや地域包括支援センターに確認するようにしましょう。
介護保険申請後に依頼する
手すりの取り付け工事が終わった後に介護保険の申請は出来ません。
自宅の改修でも手すりのレンタルでも、業者に依頼する前にケアマネージャーに相談をし、申請のステップを踏む必要があります。
業者に依頼する前に必ずケアマネージャーに伝えて介護保険の申請をしましょう。
希望する手すりが取り付け可能か事前確認する
自宅を改修して手すりを取り付ける場合は、壁材によっては工事ができないケースがあります。
まずはケアマネージャーに相談をし、その後依頼をしたい業者に取り付けが可能であるかを確認するようにしましょう。
また、住まいが賃貸の場合は工事が不可であることがほとんどです。
そのような場合は工事不要の手すりを検討しましょう。
手すりの取り付けは介護保険を上手に利用しよう!
高齢の方が自宅で安全に過ごすのに役に立つのが手すりです。
玄関や寝室、浴室、階段など、手すりがあるだけで動きが非常にラクになります。
しかし、工事をして取り付けるとなると10万円以上の費用がかかることも。
そこで利用したいのが介護保険です。
工事で手すりを取り付ける場合は介護保険サービスの「住宅改修制度」、手すりをレンタルする場合は「福祉用具貸与制度」が利用できます。
自己負担は通常料金の1~3割。
工事費用が10万円であれば1万円~3万円程度の負担で済みます。
ぜひ介護保険を上手に活用してみてください。
また、住宅改修制度と福祉用具貸与制度の申請はケアマネージャーを通す必要があります。
業者に依頼をする前に必ずケアマネージャーに希望を伝えるようにしましょう。
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