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2022.4.29

【認知症家族の悩み】家族がわからない?知っておきたい対応と家族支援

パートナーやご家族、知人がある日こんな発言や行動をしたら、あなたはどうしますか?

ランチを食べた数時間後に「お昼ご飯まだ?」
毎日通いなれている場所から電話がかかり「帰り方がわからない…」
旅行で温泉に入った脱衣所で他人の衣服を着用していることに気づかない。

現代、高齢化に伴い増加傾向にある「認知症」。
身体は元気に動き日々生活をおくり、ある日突然「え?」と思われるようなできごとが起こります。

この記事では、家族が認知症になった場合の対処法などを紹介します。

目次

1.認知症とは|中核症状

  • 記憶障害
  • 見当識障害(けんとうしきしょうがい)
  • 理解・判断力障害
  • 失語・失認
  • 実行機能障害

認知症とは、脳機能の記憶力や判断力などが、なんらかの原因によって障害され日常生活に支障が起きる状態です。

認知症は、人間の発達段階の「老年期の老い」が関係している病気の一つと言われています。

まだハッキリとした解明はされていませんが、様々な原因で脳細胞が破壊され脳の認知機能などが正常に働かず、記憶力や判断力の障害などが起こります。

意識障害はないが対人関係や社会生活において、何らかの支障が出ている状態が約6ヵ月以上継続されている状態を指します。

中核症状とは、脳の神経細胞が破壊され、直接発生する下記のような症状です。

周りで起こっているできごとを、現実として正しく認識できなくなります。

例えば、

「今までは当たり前にやれていた料理や洗濯の手順や方法がわからなくなり、できなくなった」

「相手の言っていることがわからず、会話が続かない」

「日付や時間、今いる場所がわからない」

上記の症状が中核症状です。いくつか具体例をお伝えします。

1-1記憶障害

  • 過去のことはしっかり覚えているが、新しいできごとを忘れてしまう
  • 食事をしたこと自体、忘れてしまう
  • もの忘れが激しい(ヒントを出されても思い出せない)

認知症の初期から出てくる障害です。

新しい情報を記憶できなくなるので、数分前に話した内容を再度話したり、聞いた話を忘れて同じ質問をしたりします。

新しい記憶は定着しにくいですが、幼少の頃の古い記憶は覚えていることがあるようです。

1-2.見当識障害(けんとうしきしょうがい)

  • 自宅近所で迷子になる
  • 季節に合わない服を着る
  • 家族や友人がわからない
  • 昼夜の間隔がなく、夜中に外出しようとする

見当識とは、自分自身が現在どのような状況に置かれているかを把握することです。

また、自分と他者との関係性の把握も含まれます。

例えば、「現在の年月日、季節、時間」が障害されると待ち合わせ時間に遅れたり、季節感が分からず暑い日に真冬の格好をしたりしてしまいます。

「場所」が障害されると、近所の道に迷ったり、電車で行く遠い距離の場所へ徒歩で出かけようとしたりします。

自分と他者との関係性が障害されると、既に亡くなっている両親が生きていると思い込み会いに行こうと行動することもあるようです。

1-3.理解・判断力障害

  • 抽象的な言い方がわからない(暖かい服装)
  • 目に見えないモノを理解できない(自動販売機・ATM)
  • 善悪の判断がつきにくい(店内から商品をとる)

脳で情報を処理する力の低下や理解に時間がかかるようになります。

同時に二つ以上のことを言われる、抽象的な表現や早口で言われると理解しにくいようです。

さらに、目に見えないモノが理解できないので、自動販売機やATM、駅の自動改札などの前では、どう行動していいのかわかりません。

1-4.失語・失認

失語

  • 言葉が出てこない
  • こそあど言葉(それ・あれ‥)が多くなる

失認

  • 人やモノによくぶつかる
  • 時計の文字盤が読めない
  • 目の前にモノがあることを認識できない

失語は、言語理解や言葉の表出が難しくなります。

自分の思っていることを言葉で表現できず、他者との会話が成立しにくくなります。

失認は、自分自身とモノとの位置関係や身体の状態、目の前にモノがあることを認識しにくくなります。

1-5.実行機能障害

  • 段取り通りに行動ができない
  • 整理整頓・掃除ができない

実行機能とは、段取り通りに行動する・順序よく効率的に行うことです。

実行機能が障害されると、メニューを考えて材料を購入し調理するという一連の動きが必要な料理が難しくなります。

代表的な認知症の種類 ※こちらをクリックすると詳細が見えます
  • アルツハイマー型認知症:
     →脳機能全体がゆっくりと低下し、症状の進行はゆるやか

  • 前頭側頭型認知症:
    →「神経変性」による認知症のひとつ  脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の委縮がみられる
  •  
  • 脳血管性認知症:
     →脳に血液が行き渡らなくなり、脳細胞が欠損し認知機能が低下する
      脳卒中や脳出血の発作が原因の場合は、症状が一気に進む場合もあり
  • レビー小体型認知症:
     →脳にレビー小体というタンパク質の塊が溜まる
      症状の変動波のように変化し、進行が一気に進む

2.認知症の人に絶対やってはいけない対応

    • 叱責
    • 強制
    • 命令
    • 行動制限
    • 赤ちゃん扱い
    • 役割を与えない

やってはいけない対応は、後半に説明する「認知症が一気に進む原因」と重なる部分もあります。

認知症の人は、新しい記憶は定着しにくいですが、古い記憶や家事などの体で身につけたスキルは忘れにくいようです。

介護者と一緒に、簡単な料理をする、洗濯物を干すなど身近な作業や役割に取り組むことで、生き生きするでしょう。

怪我をしたら心配…と行動制限をしたり、役割を取り上げたりすると「嫌がらせされた」「意地悪を受けた」と感じてしまい、精神的苦痛を味わうことになります。

上記のNG対応とは反対の対応をとるとよいでしょう。
本人が安心して落ち着いて生活できることで、認知症の症状は安定します。

3.ゴールの見えない認知症介護|家族の心理状態は?

  1. 第1段階:戸惑い・不安・否定
  2. 第2段階:混乱・怒り・拒絶
  3. 第3段階:割り切り・諦め
  4. 第4段階 受容

以上は、本人が認知症と診断されてから、家族がたどるであろう心理状態の流れの一例になります。

認知症を持つ家族が抱える悩みや辛さの根底にあるものは、『ゴールの見えない介護』でしょう。
これから先どうしていけばよいのか、何を目指していけばいいのか…。

迷路に迷い込んでどちらの道に進めばいいかわからない気持ちと似ています。

人間は、先の見通せないことに不安を覚えます。
不安な気持ちを抱えていると心身ともに疲弊するでしょう。

今現在、ご自身の感情がどの段階なのか、客観的に把握する目安になるでしょう。

3-1.第1段階:戸惑い・不安・否定

認知症を発症すると、変化に戸惑いを覚える段階です。

認知症だから…とわかっていても、いざ診断されると不安になり認知症を否定してしまうことも。

「これはいつもの状態…」と、症状が表れていること自体を認めない・否定しようとすることもあるようです。

徐々に否定できないほど認知症が進むと、次の段階に移行します。

3-2.第2段階:混乱・怒り・拒絶

次々変化する状況と症状に混乱や苛立ちを覚える段階に入ります。

「一体全体これはどういうことなのか!」
「どう対応すればいいのか…」と混乱しながらも介護に取り組みます。

右も左もわからない多くのことを処理し続け、否応なく進行する認知症の本人に対しても、思わず怒りを覚えてしまうのです。

結果、「どうして私が苦しい思いをしなければならないのか」と絶望し、認知症の本人も、介護する人々を拒絶するようになってしまうことも…。

また、自分ひとり我慢すれば…と考え孤立してしまい、平気なふりをして介護をこなしていることもあるので、周りも注意が必要です。

この段階では、社会的つながりが重要になります。

『次々と変化する症状を適切に理解する』
『対応のヒントを与えてくれる人達』
『心身の疲れや負担を軽減する各種のサービス』
『悩みや苦しみを共感し今後の見通しを提示してくれる仲間や家族会』

上記を意識して、少しでも重荷を下ろし認知症の本人に向き合えるようになると、次の段階へ。

3-3.第3段階:割り切り・諦め

心身の負担はありますが、認知症を悲劇的な状況ではないと割り切れる段階へ進みます。

認知症は予防も治療もできず進行する…と諦めを感じつつも、認知症とどのように寄り添っていけばいいのかを家族と本人が共に受け止めようとする段階です。

そして、認知症になっても愛すべきご家族であると気づき、現状を受け止めていくようになると、次の段階へ移ります。

3-4.第4段階 受容

認知症の本人、自分自身や家族、そして認知症そのものを受容し価値を認めていく段階です。

「認知症になった父をみて、子どものようなあるがままの姿を知りました」
「認知症介護に携わり、様々な出会いがあり救われました」

上記のように感じた家族も…。

将来、自分自身もなるかもしれない認知症。

ありのままの本人、共に生きてきた家族を受け入れ、先の未来を考えていく段階です。

全ての方が上記のような段階をたどるわけではなく、時には立ち止まったり、後戻りすることも…。

しかし、時間はかかってもいつか「受容」できると思いながら、認知症本人と家族が共に生きていける目印として、頭の隅もしくは心にとどめておいてみてはいかがでしょうか。

4.心を軽くする|認知症家族に知ってほしい対応法

  • てをぬく(がんばらない)
  • てばなす(抱え込まない)
  • 弱音をはく(我慢しない)
  • 人は人自分は自分(くらべない)
  • 症状のおわりを考える(症状の薄れ)

認知症介護を継続するには、介護者の心の負担を軽くすることがとても大切なことです。

認知症家族に知ってほしい対応法をお伝えします。

4-1.てをぬく(がんばらない)

認知症家族は、本人のために熱心に介護されていることが多く、介護者自身の苦しみや疲れが追いやられてしまうことも。

老化現象なことや、どうしようもないことも介護が足りないと必要以上に頑張ってしまうようです。

「時にはてをぬく」
ありのままを受け入れ、頑張り過ぎない。

認知症本人よりも「自分自身」を優しく受け止めましょう

4-2.てばなす(抱え込まない)

様々な思いで認知症介護を抱え込まれるケースがあります。

医療が進歩したことで昔に比べて介護が長期的になりました。

社会的現実として、介護は「ひとりで」「家族だけ」では抱え込むのは難しくなりました。

外部のサービスに介護の一部を任せることが望まれています。

認知症が進行するにつれ、本人も家族も周囲とのつながりが薄れていく傾向もあります。

同じ悩みを持つ仲間や、家族会などとつながることで、抱え込まず手放すよう意識しましょう。

4-3.弱音をはく(我慢しない)

いつもニコニコ笑顔を見せ、家族の介護の愚痴や弱音を吐けない方がいらっしゃいます。
しかし、介護はきれいごとだけではすみません。

何とも言えない感情や不満があるのは当たり前なのです。

時には信頼できる友人や介護の家族会に参加してみる。
我慢せず人に話を聞いてもらい、少しずつ愚痴や弱音を吐き出すことは認知症介護にとって、重要です。

4-4.人は人自分は自分(くらべない)

認知症の進行や症状は十人十色。
周りと比べるのは意味がありません。

周りを参考にすることは間違いではありませんが、介護にオールマイティな正解は存在しません。

認知症の進行度や本人の症状が、介護者の介護の善悪を評価するものでもないのです。
要介護者本人が、本人らしくありのままでいられることが求めるべき介護ではないでしょうか。

4-5.症状のおわりを考える(症状の薄れ)

認知症は進行していきますが、症状にもある程度の「おわり」はあるのです。

例えば、体力のある状態では徘徊する可能性があり片時も目を離せなかった人でも、体力が衰え歩けなくなると徘徊の症状は起きないでしょう。

言葉を話せている状態では、気性の荒さや暴言が頻繁だった人も、言葉を話せなくなると暴言は無くなります。

今現在、渦中にいる家族の場合は目の前の苦しみが本当に無くなるかどうかわからず、辛さは当事者にしかわかりません。

それでも、上記のように「いつか…症状は薄れる・おわるもの」と認識していることは大事です。

いつかはくる、症状の薄れ・おわりを迎える際、本人も家族も穏やかでいられるように、「いま」を過ごしましょう。

介護疲れについて詳しくはこちら↓
介護疲れの原因と対策|「もう疲れた…」あなたが頑張り過ぎないために

5.認知症の正しい理解を!家族ができるサポート

  1. 大事なサインをキャッチする
  2. あれ?と感じたら早期受診
  3. 認知症の正しい理解
  4. 支援やサービスを活用
  5. いまできることは何か見極める
  6. 経験者を味方にする
  7. 相談場所の確保
  8. 情報収集を継続
  9. 介護者や家族のプライベートの確保
  10. 家族で話し合おう

次に、家族ができるサポートについてご紹介します。

5-1.大事なサインをキャッチする

認知症は、ほんの小さな物忘れから始まります。

老化現象なのか認知症なのか、周囲にはわかりにくい。

「あれ?もしかして」と気づくことができるのは、一番近くにいる家族なのです。

5-2.あれ?と感じたら早期受診

認知症かな?と感じたら、まずは専門医の受診をおすすめします。

認知症に似た病気や、早く治療すれば落ち着く認知症もあるようです。

また、適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症なのか他の認知症なのかをきちんと診断してもらうのは必要不可欠です。

5-3.認知症の正しい理解

正しく理解し家族の生活や介護計画づくりに役立てましょう。

例えば、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症では、進行や症状などが異なり、対応が異なります。

5-4.支援やサービスを活用

介護保険など、サービスを利用出来る場合は活用しましょう。

家族だけで認知症の人を介護することはできません。
サービスは「家族の息抜き」と同時に、要介護者本人がプロの介護を受け、社会と繋がれる大切な機会になります。

5-5.いまできることは何か見極める

多くの認知症は、知的機能が低下・進行していきますが、全ての機能が失われるわけではありません。

今ある能力・できることを大切にしていきましょう。

5-6.経験者を味方にする

介護経験者の知識や経験は、社会資源です。

ひとりで抱え込まず、経験者に相談するのもおすすめです。

共感し合い情報を交換することで、大きな支えとなるでしょう。

5-7.相談場所の確保

認知症の人の実情を開示すれば、どこかで理解者、協力者が得られるかもしれません。
公的な相談機関や地域社会、家族会やネット情報などを上手に活用し相談場所の確保をしましょう。

5-8.情報収集を継続

サービスの質を見分ける目を持とう。
介護保険サービスは、利用者や家族が選択できます。

いまできることは何か見極め、質の良いサービスを選択できるように、目を養いましょう。

もしものトラブルでは、冷静に対応する姿勢を持ちましょう。
必要に応じて、外部に相談することも忘れずに。

5-9.介護者や家族のプライベートの確保

介護者にとっても自分の生活は大切です。

「介護で自分の人生が犠牲になった…」
と認識しないように自分自身の時間を大切にしましょう。

介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。

5-10.家族で話し合おう

認知症になっても、人生が否定されることはありません。
やがて来る人生の幕引きも考え、その人らしい生活を続けられるよう家族で話し合いましょう。

6.認知症施策推進大綱|国の認知症に対する取り組み

ここ最近、認知症をテーマにしてテレビや雑誌でも取り上げられるようになり、一般にも浸透してきたようです。

令和元年6月には関係閣僚会議において新たに「認知症施策推進大綱」がとりまとめられました。

認知症施策推進大綱とは、
認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる※共生を目指し、通いの場の拡大など※予防の取組を進めていきます。

※共生
認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きる、という意味

※予防
「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味
引用:認知症施策推進大綱について

認知症施策推進大綱の5つの柱 ※こちらをクリックすると詳細が見えます
  1. 普及啓発・本人発信支援
  2. 予防
  3. 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
  4. 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
  5. 研究開発・産業促進・国際展開
主な施策の目標【2025(令和7)年まで】 ※こちらをクリックすると詳細が見えます
  • 「認知症初期集中支援チーム」
  • 「認知症疾患医療センター」の設置
  • 「認知症地域支援推進員」の配置
  • 「認知症サポーター」の養成と活動支援
  • 「チームオレンジ」の仕組み
  • 「認知症カフェ」などの設置・普及
  • 「通いの場」の拡充

7.家族支援について

多くの人にとって、家族が認知症になることは初めての経験です。

家族が混乱するのは当然のことでしょう。

不安や悩みがある中で、関わる支援者が適切な対応ができれば、家族の安心になります。
『認知症の人と家族の会』などの当事者組織や、催しを紹介することも大切です。

同じ状況の人たちに話を聞いてもらえ、具体的なアドバイスを聞くことは家族にとって大きな光になるでしょう。

介護サービスなどを利用する場合、家族に配慮したサービスの調整が必要になります。

7-1.公益社団法人認知症の人と家族の会

1980年に前身の「呆け老人をかかえる家族の会」が結成されました。
認知症の人を介護する家族の苦しみを共有し、励まし助け合う目的です。

全国47都道府県に支部があり、会には介護家族、認知症の本人の他誰でも入会可能。
各地で介護をしている家族が集まり、相談・情報交換や勉強会などを開催しているようです。
公益社団法人認知症の人と家族の会

8.認知症の症状|行動・心理症状

行動・心理症状とは、自身が本来持っている性格や環境、人間関係など複数の要因がからみ合って起こる「うつ状態」や「妄想」などの心理面・行動面(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の症状です。

例えば、

「イライラする」
「何にが対しても意欲がなくなり気分が落ち込む」
「興奮したり、暴言を吐いたりする」などの症状です。

行動・心理症状は、中核症状によって引き起こされる二次的症状

この記事のはじめにお伝えした、中核症状のひとつである「見当識障害」がある場合を例に説明します。

時間や場所がわからないので、突然迷子になった際「ここはどこだ?」と混乱し不安になるでしょう。

この混乱や不安が蓄積されると、落ち込んだり、イライラ・興奮したりという二次的症状である「行動・心理症状」が現れるのです。

9.認知症で顔つきが変わる原因

  • 外からの刺激の減少
  • 脳が外部刺激に無反応
  • 二次的症状の影響

認知症になると顔つきが変わると言われ、いくつかの原因があるようです。
ひとつずつ簡単に説明します。

9-1.外からの刺激の減少

認知症の本人は年齢を重ねるごとに、日々の暮らしは単調になります。
症状が進行し要介護度が高まると、日常生活がルーティン化されてしまうのです。

1日の大きな活動は、食事、入浴、排泄が中心。
日常生活では、活動がワンパターンになりやすいです。

決められた時間に食事をし、決められた曜日に入浴する。
行動と時間や曜日の変化は少なくなります。

結果、外部からの刺激がなくなります。脳機能が低下し、徐々に顔つきの変化も現れてしまうのです。

9-2.脳が外部刺激に無反応

外部からの刺激に何にも反応しなくなる現象を「脳の自閉化」と呼びます。

健康であれば、会話中も上手にやりとりができます。
相手からの行動に反応を示します。

しかし、認知症が進行すると、名前を呼んでも自分とは気が付かず、こちらの問いかけがわからずボーとしている状態が進みます。

自閉化が進むことで、外部刺激に無反応になるため、無表情になったり顔つきに変化が起きたりしてしまうのです。

9-3.二次的症状の影響

先にも触れた抑うつ状態と呼ばれる※行動・心理症状が原因でも、顔つきは変わります。

※行動心理症状:BPSDとも呼ばれ認知症の二次的な症状

認知症による記憶力・理解力、言語機能の低下や環境の変化などが重なると、もの忘れやコミュニケーション能力の低下が目立つようになります。

今まで当たり前にできていたことが、日常生活に支障をきたすようになり、イライラ・不安になったり、うつ状態になったりします。

不安感や焦燥感が抑うつ状態を引き起こした結果、顔つきの変化に影響するといわれています。

10.認知症が一気に進む原因

  • 急激な環境の変化
  • 思考する時間の減少
  • 過度の叱責

認知症を発症した方全員ではありませんが、一気に進行が進むこともあります。
以下、原因について説明します。

10-1.急激な環境の変化

認知症を発症している方は、環境変化に弱く対応することが苦手です。
入院・転院・介護施設への入所や、引っ越しなどで※不穏になります。

※不穏:行動が落ち着かずソワソワしている状態

心身ともに健康な人でも、入学・進学・入社など新しい環境では緊張するでしょう。
最初の頃は新しい環境に不安を覚えることもありますが、徐々に慣れていきます。

しかし認知症の本人は認知機能が低下しているため、新しい人や場所、などの環境の変化を理解できないのです。

認知症の状況によっては、説明しても、自分が置かれている状況を理解できないこともあるようです。
結果、「ここはどこ?」という認識になり不安や恐怖を覚えるのです。

不安や恐怖は脳を混乱させるため、不穏な状態になり認知症が進行してしまう。
転院や介護施設への入所によって、認知症が一気に進むケースは多くみられます。

10-2.思考する時間の減少

周囲が認知症の方をサポートしすぎると、かえって認知症が悪化することもあります。
過剰なサポートは、認知症の方が自ら考え、行動する機会を奪ってしまうからです。

考えるという行為には、脳を活性化させる作用があります。
反対に考えることを止めてしまうと、脳が不活性化し、老化しやすくなります。

たとえば日常的な家事一つとっても、段取りを立てて効率よく実行するには、頭を使わなければなりません。

もし家族が、認知症だからといってすべて世話を焼いてしまうと、認知症の方が頭を使う機会が減ってしまいます。

とくに認知症の本人は、脳の老化スピードが早いことが分かっています。
そのため、周囲のちょっとした気遣いが、認知症が一気に進む原因となることも多いです。

10-3.過度の叱責

認知症の本人に対して、過度に叱ったり、責めたりする行為は、認知症が一気に進む原因となります。

過度な叱責により、認知症の本人が萎縮してしまうと、自分から考えて行動するチャンスが減少してしまうからです。

ミスや失敗、問題行動を起こした際、ミスを叱られても、叱られている理由はほとんど理解できません。

本人にとっては、
「なぜだかわからないまま怒られた」状態になります。

理由も分からず責められると、誰でも混乱し不安に思うでしょう。

認知症の本人は、叱られた理由は理解できなくても、叱られた時の嫌な感情の記憶はしっかり残ります。

結果、叱られることを恐れ、自分で考えて行動することを避けようとします。
自発的な思考・行動の減少は脳の老化を早め、認知症が一気に進むと考えられます。

11.認知症家族の悩みを知って正しい対応と家族支援を!

現在、コロナ禍を意識して外に出る機会が減少傾向にあります。

自宅滞在時間が長く、認知症の本人も、介護者や家族も心身ともに疲弊しているのではないでしょうか。

この記事では、認知症について、家族の悩みや対応・家族支援についてお伝えしました。

認知症といっても、種類や個人差によって症状や進行も様々です。
先ずは、正しい知識を知ること・今置かれている状況を認識し手立てを考える。

専門書・ネットの情報が溢れている昨今、何を信じて何を目指して認知症介護に取り組めばよいか迷うこともあるでしょう。

そんなときは、ふと立ち止まりゆっくりと深呼吸をしてください。

消化によい食事をとり、身体を休め睡眠を心掛けましょう。

どうか、ひとりで抱え込まず頑張り過ぎないで…
身近な人へ声を発してください。話をきいてもらってください。

認知症の家族がいらっしゃる人や家族の認知症に悩まれている人にとって、この記事が少しでも対応や行動のきっかけになれることを願います。

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