高齢者の水分補給は冬こそ注意が必要!健康上のリスクや予防策・おすすめの食事

「冬でも脱水するって本当かな」
「冬の水分不足対策について知りたい」
脱水や水分不足というと夏に起こる印象が強いですが、実は冬も注意しなければなりません。特に高齢者は、重大な疾患につながるなどリスクが大きいため、意識して水分補給することが大切です。
高齢者の冬の水分補給が重要な理由や水分補給におすすめのレシピなどをご紹介します。
高齢者が冬の水分補給に注力すべき理由

- 冬の脱水は見過ごされやすい
- 乾燥で水分が失われやすい
- 水分を控えてしまいやすい
高齢者は、上記3つの理由から冬に水分補給をすべきだと考えられています。
冬の脱水は見過ごされやすい
冬は気温が低く、汗をかく機会が少ないため、水分を意識してとらなくなります。体が必要な水分を十分に摂取できなければ、冬でも脱水症状を引き起こすおそれがあるでしょう。
また、高齢者は若いときよりも食事量が低下しているため、食事からの水分摂取量が減っています。若い頃よりも脱水のリスクが高い傾向にあることから、季節問わず水分補給に注意を向けなければなりません。
加齢によって喉の渇きを感じる機能が低下していることも、水分不足になる原因の一つです。冬は特に脱水が進んでも自覚しにくく、気づいたときには脱水になっているケースは少なくありません。
高齢者の隠れ脱水について詳しくはこちら↓
冬は高齢者の隠れ脱水に注意!症状やチェック方法、対策などを解説
乾燥で水分が失われやすい
冬は空気が乾燥しやすく、皮膚や呼吸などから体の水分が蒸発する「不感蒸泄」が通常よりも多くなります。
不感蒸泄は体の表面と周囲をまとう空気の湿度が異なるほど増えるため、乾燥しやすい季節は注意が必要です。暖房などを使用すると余計に空気が乾燥し、知らず知らずのうちに不感蒸泄を進行させてしまいます。
高齢者はもともと体内の水分貯蔵庫である筋肉量が少なく、喉の渇きを感じる機能が衰えているため、冬でも脱水になりやすいでしょう。
水分を控えてしまいやすい
多くの高齢者は、冬になると頻尿の悪化を避けるために水分を控える傾向にあります。夜間のトイレ回数が増えるのは、寒い冬は特に回避したい心理が働くでしょう。
また、気温が下がれば体を冷やしたくないという理由で、冷たい飲み物を控えてしまいます。そのため、水分補給の機会が減少し、脱水を引き起こしやすくなってしまうでしょう。
冬の水分不足が招く高齢者の重大リスク

- 重篤な疾患につながる
- ヒートショックを起こしやすくなる
- 感染症と排泄トラブル
冬の水分不足によって、高齢者は上記のような重大なリスクにさらされる可能性があります。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
重篤な疾患につながる
体内の水分不足は、単なる体調不良にとどまらず、命に関わる重篤な疾患を引き起こす可能性があります。水分が減ると血液がドロドロの状態になり、血の塊である血栓ができやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞などを起こしやすくなってしまうでしょう。
脳梗塞や心筋梗塞など血栓によって血管が閉塞する疾患は、高齢者が発症すると寝たきりや認知機能の低下など、介護レベルを高める原因になりかねません。
ヒートショックを起こしやすくなる
冬の水分不足は、ヒートショックのリスクを高めます。ヒートショックとは、急激な体温変化によって血圧が乱高下して、心臓・血管系に負担を与える現象です。
体の水分が不足していると血管内の血液量が減ったり血流が悪くなったりして、血圧の変動に心臓や血管が対応しきれず、ヒートショックのリスクを高めてしまうでしょう。心臓や血管に大きな負担がかかると、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすくなり、命を落とす危険もあります。
高齢者は加齢の影響で血圧が変動しやすく、高血圧や脂質異常症などの持病がある人は血圧がさらに変動しやすいといわれているため、特に注意が必要です。
感染症と排泄トラブル
体の水分が不足すると免疫機能が低下したり腸の働きが悪化したりするため、感染症や便秘になりやすくなります。通常、体内に侵入したウイルスなどは鼻や喉の粘膜に存在する線毛の働きによって体外に排出されますが、水分不足は線毛の働きを低下させ、ウイルスを排出できずにインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるでしょう。
また、水分が足りずに腸の水分が失われると便が硬くなり、腸内にガスや便が溜まって腸閉塞を引き起こすケースもあります。腸閉塞は激しい腹痛や嘔吐を伴い、放置すると命に関わる危険があるため、早めの対処が肝心です。
冬に効果が期待できる高齢者の水分不足対策

- 室内を適切な温度・湿度に保つ
- 温かい飲み物のこまめな摂取を習慣化する
- 頻尿の懸念を緩和する
高齢者の水分不足には、上記3つを意識して対策しましょう。日常生活の中で無理なく取り入れられる工夫を知っておくと、健康的に冬を乗り切れる可能性があります。
室内を適切な温度・湿度に保つ
冬の適切な室内の温度は20度、湿度は45~55%です。暖房の温度が低すぎると低体温症のリスクが高まり、温度が高すぎると空気が乾燥したり脱水のリスクが高くなります。
湿度が低すぎるとインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるという報告があるため、湿度を適切に保つことは喉や鼻粘膜の乾燥を防ぎ、感染症の予防にもつながるでしょう。
実際に設定した暖房や加湿器温度と、室内の温度と湿度が異なる場合があります。温度と湿度を同時に確認できる湿温度計を設置して、室内の環境が適切かどうか定期的に確認しましょう。
最適な暖房の設定温度について詳しくはこちら↓
高齢者に最適な暖房の設定温度は?つけっぱなしの注意点や寝るときの対応など
温かい飲み物のこまめな摂取を習慣化する
1日1.5リットルを目安に水分を補給しましょう。冷たい飲み物よりも温かい飲み物のほうが体を冷やさず、胃腸にもやさしいため適しています。
たとえば、白湯やほうじ茶、生姜湯などの飲み物は、カフェインが含まれておらずおすすめです。カフェインが含まれるコーヒーや紅茶、緑茶などの飲み物は、カフェインの利尿作用によって体の水分を失いやすくなるため、水分補給には適していません。
一度に多量の水分を飲むよりも、少量をこまめに分けて補給するのがポイントです。朝起きたとき、食事の前後、入浴の前後など、1日の中で水分を飲むタイミングを決めておくと習慣化しやすいでしょう。
冬におすすめの温かい飲み物について詳しくはこちら↓
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頻尿への懸念を緩和する
頻尿の悪化が気になって水分を控えてしまう場合、利尿作用が少ない飲み物の摂取を心がけましょう。
たとえば、白湯や麦茶、ハーブティーなどノンカフェインの飲み物が適しています。逆にコーヒーや緑茶などカフェインを含むものやアルコール類は利尿作用が強いため、控えましょう。
また、尿意を催してもトイレに行きやすくようにトイレ内の環境を整えておくことも重要です。小型ヒーターを持ち込んだり、窓に断熱シートを貼ったりし、なるべく寒暖差をなくしましょう。
高齢者の水分不足を補う冬レシピ
- 野菜たっぷりラタトゥイユ
- 里芋とれんこんの煮物
- 簡単チーズリゾット
高齢者の水分不足を補うための冬レシピ3つをご紹介します。いずれのメニューも簡単に作れるため、ぜひ試してみてください。
野菜たっぷりラタトゥイユ

(材料:2~3人分)
- 茄子 中くらい2本
- ズッキーニ 1本
- 玉ねぎ 1個
- にんにくチューブ 2~3cm
- オリーブオイル 大さじ2
- ★トマト缶 1缶(400g)
- ★白ワイン 50ml
- ★コンソメ 小さじ2
- 塩・こしょう 少々
(作り方)
- 茄子は乱切り、ズッキーニは半月切り、玉ねぎは薄くスライスする。
- フライパンにオリーブオイル大さじ2をしいて、にんにくチューブ、1)の野菜を炒める。
- 茄子に火が通ったら★印の調味料を加えて、一度煮立たせる。
- 煮立ったら蓋をして10分加熱する。
- 塩・こしょうで味をととのえたら完成。
茄子やトマト缶など水分を多く含む野菜をたっぷり使ったメニューです。煮込む料理で消化も良く、体も温まるため寒い冬に適しています。
里芋とれんこんの煮物

(材料:2~3人分)
- 里芋 300g
- れんこん 100g
- 人参 中くらい1本
- しいたけ 2枚
- さやいんげん 2~3枚
- ★しょうゆ 大さじ5
- ★みりん 大さじ2
- ★料理酒 大さじ2
- ★だし汁 400~500ml
(作り方)
- 里芋は皮をむいて一口サイズにカットする。れんこんは皮をむいて乱切りにし、水にさらす。人参は乱切り、しいたけは石づきをとり、さやいんげんは筋をとって茹でておく。
- 鍋に★印の調味料と1)の材料を入れて煮る。煮汁が煮立ってきたら弱火にして落し蓋をし、10分煮る。
- 野菜が柔らかくなったら、落し蓋をとってさらに10分ほど煮込む。
- 器に盛り付けて、さやいんげんを飾ったら完成。
里芋もほっこりした食感とれんこんのほどよい歯ごたえを楽しめるメニューです。煮汁に水分が含まれているため、自然に水分補給できる点が嬉しいポイントとなっています。
簡単チーズリゾット

(材料・2人分)
- 白米 1合
- しめじ 1/2房
- 玉ねぎ 1/2個
- ベーコン 2枚
- とろけるチーズ 2枚(30g)
- 水 150ml
- 牛乳150ml
- コンソメ 小2
- 塩・こしょう 少々
(作り方)
- 米は洗ってザルに上げておく。しめじは割りほぐし、玉ねぎはみじん切りにする。ベーコンは一口サイズに切る。
- 深めのフライパンにバターを入れて加熱し、米を炒める。米の色が透き通ってきたら1)の材料を加えてさらに炒める。
- 水とコンソメを加えて、10~15分ほど中火で米がふっくらするまで炒める。米に火が通らない場合は2~3分ずつ追加で加熱する。
- 牛乳、チーズを加えて炒め合わせ、塩・こしょうで味を整えたら完成。
米が牛乳などの水分を吸っているため、無理なく水分が摂れるメニューです。本格的なチーズリゾットを自宅で楽しめます。
冬こそ水分補給を意識して、高齢者の健康を守ろう
冬は汗をかく機会が減るため、喉の渇きを感じにくい季節です。しかし、空気が乾燥していて普段よりも体の水分が呼吸や皮膚から失われやすくなっています。
水分不足が続くと、脱水によって血液がドロドロになり脳梗塞や心筋梗塞など重篤な疾患を引き起こしたりヒートショックを起こしやすくなったりするため、予防が重要です。
室内の温度は20度、湿度は45~55%を目安に保つ、温かい飲み物をこまめに飲むなどの工夫で、水分不足を回避しましょう。
食事からも水分を摂取できるため、毎日の献立に汁気があるメニューや水分を多く含む野菜を積極的に取り入れるのがおすすめです。体の外からも内側からも水分補給を意識して、寒い冬を元気に過ごしましょう。_1.jpg)
PROFILE
管理栄養士
今井尚美
(Imai Naomi)
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